太陽系の第十惑星、発見か?

【2005年8月1日 国立天文台 アストロ・トピックス(126)JPL News Releases

カリフォルニア工科大学のブラウン(Mike Brown)博士らの研究チームは、太陽系で10番目の惑星の可能性がある候補天体を発見したことを公表しました。

この天体は、2003年10月31日にアメリカ・カリフォルニア州のパロマー山天文台の口径1.2メートルのシュミット望遠鏡で撮影されていましたが、天体の距離が遠く、みかけの動きがあまりにも小さかったため、気づかれませんでした。今年1月に、データを再解析した研究チームは、その明るさからかなり大きな天体であると判断し、それ以後7カ月間にわたり、軌道決定を行うなどの追観測を行い、2003 UB313 という符号が付けられました。国際天文学連合が発表した軌道は次のとおりです。

    近日点通過時刻 = 2257 Jan. 26.1837 TT   近日点引数 = 151.3115 度
   軌道離心率     = 0.441613               昇交点黄経 =  35.8750 度 (2000年分点)
   近日点距離   = 37.808 AU              軌道傾斜角 =  44.1770 度

この天体は現在、太陽から97天文単位、約145億キロメートルの彼方にあるとされています。それにしては明るさが18.5等と、これまで発見された太陽系外縁部の小天体群の中では飛び抜けて明るい天体です。太陽の光の反射率を考えても、その直径は冥王星よりも大きいことは確実です。一方、NASAの赤外線宇宙望遠鏡スピッツァーによる観測では、この天体からの赤外線はとらえられなかったので、直径の上限値は約3200キロメートルと考えられます。 公転周期は557年で、2257年には太陽に37.8天文単位まで近づくと計算されています。この場所は太陽系外縁部に存在するエッジワース・カイパー・ベルトと呼ばれる小天体群が分布する領域です。したがって、この天体も冥王星と同様、この小天体群のひとつと考えてよいでしょう。この天体の特徴として、軌道面が惑星が存在する黄道面に対して44度も傾いていることがあげられます。これは冥王星よりも大きな傾きで、エッジワース・カイパー・ベルト天体の中でも特異といえるでしょう。

ところで、今回の発見を大々的に発表したアメリカ航空宇宙局(NASA)では、この天体が第十惑星と呼ばれることを前提としているようですが、これはいささか判断が分かれるところでしょう。惑星と呼ぶかどうかは、同じような領域にある他の天体の有無や、大きさなどを勘案して、国際天文学連合で議論され、 最終的に決定されることになります。実は今回、この候補天体と同時に 2003 EL61 および 2005 FY9 という、やはり大きなエッジワース・カイパー・ベルト天体の発見も公表されています。今後も続々と、同じような大きさの天体が、この領域に見つかる可能性は否定できません。その場合、それらをすべて惑星 と呼ぶような事態は避けなくてはならないでしょう。その意味でも、この天体が第十惑星として仮に正式に承認されるとしても、それはまだまだ先の話となるでしょう。ただ、今回の一連の発見が、太陽系に新しい広がりをもたらし、さらにその先へと期待をつなぐことになったことは確かです。


「十番目の惑星」ついに発見か

冥王星よりもさらに大きいと見られる天体が、太陽系のはるか外側の部分で発見された。

(2003 UB313の想像図) (パロマー天文台のサミュエル・オースチン望遠鏡による2003 UB313の画像)

(上)パロマー天文台のサミュエル・オースチン望遠鏡による2003 UB313の画像。(下)2003 UB313の想像図。クリックで拡大(提供: NASA/JPL-Caltech )

発見された天体は、2003 UB313という仮番号を与えられ、現在太陽からの距離は地球と太陽の距離の97倍だ。これは今のところ太陽から最も遠い太陽系天体ということになる。2003 UB313 は、エッジワース・カイパーベルト天体に属すると見られ、数多く発見されているエッジワース・カイパーベルト天体の中で、地球から見て三番目に明るい。もし2003 UB313が、太陽からの光を100%反射していると仮定すれば、そのサイズは冥王星(直径2300km)と同じくらいだ。しかし実際には反射する割合はもっと小さいはずで、少なくとも冥王星よりも大きいということになる。

2003 UB313が最初に撮影されたのは、2003年10月31日のことで、パロマー天文台の1.2m望遠鏡によるものだった。しかし、地球から遠いため、今年の1月に当時のデータを再分析するまで動いていることに気づかれなかったのだ。発見から7ヶ月間、2003 UB313の動きを解析し続けた結果、その遠さと大きさが明らかになったのだ。

一方で、NASAのスピッツアー望遠鏡がこの天体を検出できていないことから、2003 UB313の直径は最大3000kmと見積もられている。2003 UB313を撮影したメンバーの一人である惑星科学の教授は、「おそらく冥王星の1.5倍の大きさがあると考えられるが、まだ詳しくはわからない。しかし、太陽系の外側の部分で見つかった天体の中で、冥王星よりも大きい最初の天体であることには100%の自信がある」と述べている。

現在、発見者たちは国際天文学連合にこの「新惑星」の名前を申請中とのことだ。その名前を明かす前に、この天体を惑星とみなすかどうかの決定を待つという。


エッジワース・カイパーベルト: 1951年、アメリカの天文学者カイパーとエッジワースは、冥王星の外側に黄道面に沿ってリング状に広がる彗星の巣があると考えた。エッジワース・カイパーベルト天体は、1000個以上見つかっており、1997年6月には軌道が歪んでいて、遠日点では130天文単位かなたまで遠ざかる(15874)1996 TL66が発見されている。さらに大きく、直径1250kmと推定される(50000)クワーオアー、ベルトよりも遠くにあるとされる(90377)セドナ(近日点距離76AU、遠日点距離927AU)など、多くの太陽系外縁部の天体が発見されてきている。(最新デジタル宇宙大百科より)