出現するか、6月中旬の新流星群

【2005年6月10日 国立天文台 アストロ・トピックス(108)

梅雨空に新しい流星群が見られるかもしれない、という可能性が指摘されています。この流星を生み出すのではないか、と思われているのは、今年の5月に新しく発見されたカタリナ彗星(P/2005 JQ5 (Catalina))です。

この彗星は公転周期が4.4年の短周期彗星なのですが、その軌道が6月中旬から下旬にかけて、地球に接近していることが判明しました。彗星の軌道が地球の軌道平面を通過している昇交点に、地球が最も接近するのは7月1日で、その時の距離は約1400万キロメートルです。この距離だと流星が出現するにはやや遠いのですが、この彗星の軌道は地球の軌道面に近いために、実際に彗星の軌道と地球軌道が最接近する場所があります。この地点を地球が通過するのは6月12日から13日になり、接近距離も360万キロメートルとかなり近くなります。

彗星の軌道が地球の軌道にこれだけ接近していると、その地点を地球が通過する時期に、彗星から放出された塵粒が地球大気に多数突入し、流星群となる可能性があります。したがって、6月12日から13日に流星群が見られるかもしれない、というわけです。流星群が出現したとすると、その放射点の方向は、さそり座の北西部になると予想されています。日本でも深夜日付が変わる頃に南中する場所ですから、月明かりの邪魔もなく、観測条件としては悪くないでしょう。

しかしながら、流星出現に対しては悲観的な見方も多いようです。もともと、この彗星はそれほど明るい活発なものではなく、流星になるようなチリ粒の放出量も低いと考えられます。たとえ流星となるチリの帯が形成されていたとしても、日本流星研究会の佐藤幹哉(さとうみきや)氏の計算では、すべて地球軌道よりずいぶん内側に入り込んでしまっていて、地球軌道にはまともに交差しておらず、まとまった流星出現はないだろうと予測しています。

いずれにしろ梅雨の時期ですので、晴れる可能性は少ないかもしれませんが、もし晴れることがあれば、未知の流星群に出会う期待を込めて、夜空を眺めてみたいものです。

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