孤立した楕円銀河NGC 4555に、巨大な暗黒物質のハローが発見された

【2004年11月8日 CHANDRA Press Room

チャンドラX線観測衛星によって、孤立した楕円銀河の周辺に巨大な暗黒物質のハローが発見された。可視光観測では楕円銀河には見られない暗黒物質のハローの発見は、暗黒物質と銀河形成の理論に大きな影響を与えるかもしれない。

(NGC 4555のX線画像と可視光画像)

NGC 4555の画像。(左)チャンドラによるX線画像、(右)可視光画像。クリックで拡大(提供:X線:NASA/CXC/E.O'Sullivan et al; 可視光:Palomar DSS)

チャンドラによって観測が行われたのは、かみのけ座の銀河NGC 4555で、われわれからは約3億光年離れている。かなり大きな楕円銀河だが、銀河団には属していない。

X線による観測結果から、この銀河の周りに摂氏1千万度の高温ガスが直径が40万光年にわたり広がっていることが明らかになった。これは、可視光で見えている大きさのほぼ2倍のスケールだ。このようなガスが存在できるためには、暗黒物質のハローが存在している必要がある。暗黒物質の総質量は、NGC 4555に存在する星の全質量の10倍程度で、高温ガスの質量のおよそ300倍となっている。

NGC 4555の観測結果から、楕円銀河は、銀河団の中にあるか孤立しているかといった周辺の環境に関係なく、暗黒物質のハローを持つことができるということが示された。しかし、暗黒物質のハローを持つことができるかどうかは一体何によって決定されるのかという点について、重要な疑問が生じる。

別の可視光観測の結果によると、近傍の3つの楕円銀河にはほとんど暗黒物質のハローが見つからなかった。これら3つは緩い(銀河数の少ない)銀河群の中に位置していたり孤立して存在したりしており、この点ではNGC 4555と同じような環境だ。X線の観測で大きく広がった暗黒物質ハローが見つかったNGC 4555とこれらの銀河の差は果たして何だろうか。解釈によっては、銀河形成における冷たい暗黒物質の理論に大きな変更が必要になってくるかもしれないとのことだ。答えを得るには、今後より多くの楕円銀河について、理論面、観測面の両方からの研究が必要だと専門家は語っている。