観測とシミュレーションの矛盾を解決する鍵は、矮小銀河の質量変化

【2004年6月21日 The University of Chicago, News Office

シカゴ大学を中心とするグループの研究で、矮小銀河が過去により大きな質量を持っていたことが明らかにされた。銀河形成の理論と観測の矛盾についての解決となるかもしれない。

(銀河形成のシミュレーション画像)

銀河形成のシミュレーション画像(提供:Simulations were performed at the National Center for Supercomputer Applications (NCSA) at Urbana-Champaign by Andrey Kravtsov (The University of Chicago) and Anatoly Klypin (New Mexico State University). Visualizations by Andrey Kravtsov.)

専門家が考える銀河形成のシナリオは、「冷たい暗黒物質理論」に基づいている。これは、当初小さかった銀河が衝突と合体を繰り返し、星の形成が起こり、そこに新たな星を含む大質量銀河が作られるというものだ。この考えかたは、近年の観測データといくつかの点で一致する。しかし、大きな銀河の周囲を巡っている暗黒物質を含む衛星銀河の数が、シミュレーションでは予測の10倍もできあがってしまうという問題があった。

この矛盾に対して、今回もっともらしい解決策が研究結果として提示された。新しいスーパーコンピュータによるシミュレーションによれば、その解決の糸口は矮小銀河の進化の過程に隠されているようだ。

今回のシミュレーションによれば、いくつかの矮小銀河は過去により大きな質量を持っていたことが明らかにされた。大きな質量があった頃には、自らの重力によって、星を形成し銀河になるためのガスを集められたというのだ。そして、質量を急速に増大させた後、より大きな銀河や周囲の銀河からの潮汐力によって質量のほとんどを失い、現在のような矮小銀河になったと考えられる。現在われわれの天の川銀河とアンドロメダ大銀河の周辺を回る矮小銀河も、このような進化の過程を経たのだろう。

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