チャンドラX線衛星が明かす、銀河の激しい過去と中心に潜む巨大ブラックホール

【2004年5月19日 Chandra Photo Album

NASAのチャンドラX線衛星が、5000万光年離れたおとめ座にある巨大な楕円銀河M87を観測した画像が公開された。数百万度という高温の環境で作られた空洞のような構造、輝くX線のアーク(弧)に取り囲まれる中心のジェットが捉えられている。

(X線によるM87銀河の中心領域の画像) (ジェットが見られる拡大画像)

(上)X線によるM87の中心領域の画像、(下)中心部の拡大画像。ジェットが見られる(提供:NASA/CXC/W. Forman et al.)

M87の中心から5万光年ほど離れた領域には、かすかなリングとリングを越えて伸びる二つの柱のような構造が見られる。これらの特徴からは、中心にある巨大ブラックホールが数百万年にもわたって何度もアウトバースト(突発的な爆発)を起こし、銀河全体に影響を及ぼし続けてきたことがが示唆される。

また、拡大された画像には、高エネルギー粒子のジェットが見られる。このジェットは、磁気を帯びたガスが中心のブラックホールに向かって回転しながら落ち込んでいく時にできるもので、そのうちもっとも最近のものを見ている可能性が高い。

さらに、半径4万5000光年と5万5000光年の2つのリングが外側の領域に存在することもわかった。これらのリングは、おそらく1000万年から1400万年前の爆発によってできたものだろう。左上から右下にカーブを描いているX線の柱状構造も、過去のアウトバーストで銀河中心から運ばれたガスと考えられている。

このようなX線の特徴は、他の銀河団の中心に位置する銀河にも見られている。大銀河の中心にある超巨大ブラックホールのアウトバーストは、意外にありふれた現象として、巨大な銀河と中心ブラックホールの成長速度に影響を及ぼしているのかもしれない。