活動銀河NGC 1068に存在する宇宙モンスターをクローズアップ

【2004年5月10日 ESO Press Release

ヨーロッパ南天天文台のVLT干渉計(VLTI)とVLTIに搭載されたMIDIによって、活動銀河の中心に存在するブラックホールを取り巻き回転する円盤状の雲や、その温度などが明らかにされた。また、円盤を構成するちりの組成についても具体的な示唆を与えてくれる観測結果がもたらされた。

(活動銀河NGC 1068のもっとも内側の領域を捉えた画像)

活動銀河NGC 1068の中心部分。スケールは左から3000光年、300光年、3光年。クリックで拡大(提供:ESO)

NGC 1068(M77)はくじら座に位置する銀河で、5000万光年かなたにある。一見すると通常の棒渦巻き銀河となんら変わったところはないように見えるが、中心にある太陽の1億倍もの質量をもつブラックホールによって、われわれに一番近い活動銀河として明るく輝いている。そのまぶしさは可視光だけでなく、紫外線やX線観測によっても捉えられている。

この銀河のもっとも内側に発見されたのは、摂氏50度という比較的温かいちりの雲で、直径11光年、厚み7光年で広がっていることがわかった。内側には、さらに高温の摂氏500度の領域が2光年にわたって広がっていることもわかっている。これは理論によって予測されていた構造で、ブラックホールを取り囲んで回転する円盤型の雲だと考えられている。しかし一方で、厚みが直径の65%程度という雲が安定して存在するためにはエネルギーが絶え間なく流入され続けている必要があるが、現在の活動銀河中心部に関するモデルでは説明ができないということだ。

また、スペクトルの分析から、円盤を構成するちりの組成も明らかにされようとしており、カルシウムアルミニウムケイ酸塩ではないかと考えられている。

天文学の新たな分野の幕を開いたVLT干渉計と搭載されたMIDIによる観測は、まだ始まったばかりだ。今後の観測結果の続報が待ち遠しい。