チャンドラ最新画像集
点滅するX線源、三日月星雲

【2003年11月12日 Chandra Photo Album (1) / (2)

NASAのX線観測衛星チャンドラによる最新の画像を2つ紹介しよう。

銀河の中に浮かび上がる、X線クリスマスツリー

アンドロメダ座の方向にある3800万光年かなたの銀河NGC 1637のX線観測で、クリスマスツリーの電飾のようにX線が点滅しているようすが捉えられた。

(NGC 1637のX線画像)

NGC 1637のX線画像。1999年に観測された超新星爆発から4日後、49日後、495日後、633日後を捉えている(提供:NASA/CXC/Penn State/S. Immler et al.)

写真は、21か月間にわたるNGC 1637の観測の結果だ。中性子星やブラックホールといった強烈なX線点源が数多く写し出されている。このようなX線は、中性子星などと連星系を形成している相手の星から引き剥がされたガスが中性子星などに落ち、強力な重力によって圧縮、加熱されたガスから放射されている。X線の放射は急激に起こり、ほんの数秒のうちには元の穏やかな状態に戻ってしまう。

この銀河を可視光で観測すると、500億個の星々が長い年月をかけて進化を続けている、いたって穏やかな渦巻き銀河として見える。その穏やかな見かけの裏では、このX線の写真に見られるような激しい現象も起きているのだ。

1999年に起こった超新星爆発(上段の2枚に見える、中央すぐ右下の点)以降、チャンドラによるX線でのほか可視光や電波での観測も何度か同時に行われている。多波長での観測を同時に行うことで、多くの重要なデータが得られると期待されている。

また、特にチャンドラの観測では、きわめて強力なX線源が見つかった(中央左の明るい白点)。このX線源は、ほんの数百年前にできあがったばかりの若いブラックホールであると考えられている。

三日月星雲:大質量星の短い一生の最後

三日月星雲NGC 6888は、約5000光年かなたのはくちょう座の方向にある星雲である。大質量星HD 192163から吹き出した強烈な恒星風に飛ばされたガスが加熱され光って見えているのだ。

(NGC 6888の多波長観測による合成画像)

三日月星雲NGC 6888の一部。X線の観測(青)と可視光の観測(赤と緑)を合成したもの(提供:X線:NASA/UIUC/Y. Chu & R. Gruendl et al.、可視光:SDSU/MLO/Y. Chu et al.)

この星は、わずか450万歳(太陽の1000分の1)で早くも一生を終えようとしているようだ。大きく膨れ上がって赤色巨星となった星は、時速3万キロメートル以上で外層部を吹き飛ばしていく。その2万年後(星の時間スケールではほんの一瞬の後)、中心の高温部からの強烈な放射により、時速500万キロメートルもの猛烈な速度でガスが外側に押し出されていくのである。

この2つの風がぶつかると、圧縮された層(赤い部分)ができあがり、さらに2方向に衝撃波が生じる。外側に向かう衝撃波はフィラメント状構造を作り(緑の部分)、内側へ動く衝撃波はX線を放射する数百万度の構造(青い部分)を形成する。画像に見られる色鮮やかなそれぞれの部分は、一生を終えようとしている星が作り上げているのだ。

HD 192163は、数十万年以内には超新星爆発を起こすだろうと考えられている。この画像やデータを解析することで、まもなく超新星爆発を起こす星の質量やエネルギーの量、それに化学組成という、重要なデータが得られるだろう。