ブラックホールから発せられる宇宙一の重低音

【2003年9月17日 Chandra Photo Album

NASAのX線観測衛星チャンドラの観測により、ブラックホールから音波が発せられていることが初めて明らかになった。

(ペルセウス座銀河団の画像)

チャンドラが観測したペルセウス座銀河団。左はX線のエネルギーに応じて色付けされた画像、右は音波を視覚化した画像(提供:NASA/CXC/IoA/A.Fabian et al.))

音波を発しているブラックホールがあるのは、地球から2億5000万光年かなたのペルセウス座銀河団である。2002年に行われた詳しい観測により、銀河団中のガスがさざ波のようになっているようす写しだされた。このさざ波は、銀河団中心のブラックホールから外側へ向かって伝わっていった音波が存在している大きな証拠である。

音波は、音階で言えば「シ」のフラットにあたるが、あまりにも低い音なので人間の耳では聞き取ることはできない。耳慣れた「ド」の音よりも57オクターブも低いこの音は、これまでに検出された音のうちもっとも低いものである。

音波の存在は、銀河団に関する大きな謎の一つを解く鍵となるかもしれない。銀河団中には高温のガスが存在していることが観測されているが、なぜ高温のまま存在し続けられるのかについてはうまく説明されていない。ブラックホールが生み出す大量のエネルギーが音波に乗って中心から外側へと伝えられ、そのエネルギーのおかげで銀河団全体のガスが暖かいままでいられるのだろうという新たな説が、銀河団の謎を解くかもしれないのだ。

なお、リリース元のサイトでは、音波やガスのようすがイラストやアニメーションでわかりやすく説明されている。