電波望遠鏡の観測によるパルサーまでの距離測定

【2003年8月27日 NRAO Press Releases

NRAO(アメリカ国立電波天文台)のVLBA(超長基線電波干渉計)を用いた電波観測により、パルサーまでの距離が正確に測定された。パルサーとなっている中性子星の大きさなどが明らかになりつつある。

(モノジェム・リングの画像)

X線衛星ローサットが撮影したモノジェム・リング(提供:Max-Planck Institute, American Astronomical Society)

観測されたのは、ふたご座にあるパルサーPSR B0656+14で、ふたご座といっかくじゅう座にまたがる超新星残骸「モノジェム・リング」の中央付近に位置している天体だ。超新星残骸の成因を考えれば、パルサーと超新星残骸は同じ大質量星の爆発によって誕生したとみなすのが妥当だろう。しかし、これまでの観測ではパルサーまでの距離は約2500光年と見積もられており、超新星残骸までの距離(約1000光年)とは大きな隔たりがあった。

研究グループは、2000年から2002年にかけてVLBAを用いてこのパルサーの位置を正確に観測した。地球が公転する間に軌道上の反対側から天体を観測すると、その天体の見かけ位置がさらに遠い天体に比べてわずかにずれて見える。この「視差」を測定することで、パルサーまでの正確な距離が求められたのだ。得られた距離はおよそ950光年で、めでたく超新星残骸の距離とほぼ一致したのである。

パルサーまでの距離がわかったので、次はそのパルサー(回転している中性子星)自体の研究が進められるようになり、直径が数十kmということもわかった。また、これまでは謎であった宇宙線に関する謎についても、このパルサーに関連するものだということがわかってきた。

VLBAは、西はハワイから東はアメリカ領バージン諸島(西インド諸島東方の島)まで8000kmにもわたる電波望遠鏡アンテナ群だ。8000kmという長い基線によってひじょうに高い分解能が得られ、天体の細部まで観測することができるシステムである。

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