ハッブル宇宙望遠鏡による超新星の観測から宇宙膨張の歴史を探る

【2003年4月16日 HubbleSite - NewsCenter

ハッブル宇宙望遠鏡のACSカメラによって撮影された、50〜80億年も遠方にある超新星の写真が公開された。

(1995年と2001年に撮影された写真)

1995年(左)と2002年(右)にハッブルによって撮影された写真。2002年のほうには超新星が赤く写っている(提供:NASA and J. Blakeslee (JHU))

今回発見された2個の超新星は、今回ACSカメラで撮影した写真を以前別のカメラで撮影したものと比較して見つけられたものである。超新星からの光を分光観測することで、その超新星までの距離や超新星が暗くなっていくようすなどを調べることができる。その結果、これらの超新星がIa型と呼ばれるタイプのものであることがわかった。

Ia型の超新星は、白色矮星の表面に伴星からのガスが降り積もり、臨界質量に達したところで大爆発を起こして輝いて見える現象であると考えられている。Ia型の超新星はどれもよく似た物理過程を経て起こるので、明るさを理論的に予測することができる。その理論的な明るさと見かけの明るさを比較すれば距離を見積もることができるというわけだ。

遠方の天体を見ることは、過去の宇宙の姿を見ることと同じである。つまり、今回の超新星を調べることで、50億年以上前の宇宙のようすを調べることができるということだ。この当時の宇宙膨張は宇宙の自己重力の影響で減速していたと考えられているが、ある時期を境に正体不明の「ダークエネルギー」によって加速に転じたことが、別の超新星の観測から示唆されている。数多くの超新星を観測すれば、宇宙膨張の歴史をもっと詳しく記述できるようになるだろう。