可視光で観測した南のチャンドラ・ディープ・フィールド

【2003年1月23日 ESO Press Photos

南のチャンドラ・ディープ・フィールド(以下CDF-S)と呼ばれる天空の小さな領域を、南米チリのESO(ヨーロッパ南天天文台)・ラ・シラ観測所にある2.2mの望遠鏡で長時間観測して得られた写真が公開された。満月より少し大きい領域をカバーしたこの写真には、10万個以上の銀河や数百個のクエーサーが写されている。

南のチャンドラ・ディープ・フィールド。B, V, Rの3つの波長帯で撮影された画像を合成。領域の大きさは36分角×34分角(提供:ESO

ディープ・フィールドとは、近くに明るい天体がないところを狙って長時間観測された天空の狭い領域で、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した「ハッブル・ディープ・フィールド(北領域、南領域、以下HDF)」などが有名である。今回観測されたCDF-Sは、もとはX線観測衛星チャンドラが暗いX線源を検出するために観測を行なった領域で、南天の「ろ座」の一角にある。この領域は、チャンドラや今回の観測のほかにもXMMニュートン望遠鏡(X線観測)やハッブル宇宙望遠鏡などで観測されている。

観測は3つの研究グループによって別々に行なわれた。ラ・シラ観測所の2.2m望遠鏡に広視野撮像カメラとさまざまな波長帯のフィルターを取り付け、およそ4年間にわたって延べ50時間近くの観測を行なった。写真にはHDFに写されているほど暗い天体までは写っていないが、視野の広さは200倍も広い。結果としてHDFの50倍の数の銀河が写っており、より代表的な宇宙の姿を捉えていると言える。

多くの波長で大量の銀河を観測し得られたデータを解析することで、星や銀河の形成と進化のようす、波長によって見え方が違う天体の正体や性質、銀河の種類ごとの割合など、多岐にわたる研究が可能になる。また、長期にわたって観測を行なったので、明るさが変動している天体や超新星のデータも得られるかもしれない。観測されたのは小さな領域だが、そこから得られる科学的成果はとても大きいものになりそうだ。