100億光年かなたに見つかった宇宙のヒーロー

【2003年1月20日 JPL News Release

ヒーローが登場するのは漫画や映画のお話だけではない。この宇宙にもヒーローは存在するのだ。ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡による観測から、100億光年以上かなたの電波銀河の近くにヒーローが見つかった。

(Hero天体の可視光と近赤外線の写真)

ヒーロー天体53W002。可視光の写真(左)では何も写っていないが、近赤外線の写真(右)では中心に天体が写っている(提供:NASA / JPL

ヒーロー(HERO)という呼び名はHyper Extremely Red Objectの頭文字をとったもので、日本語では「極超赤色天体」と訳される。その名のとおり、可視光の波長ではまったく何も観測できず、赤外線の波長で観測して初めてその存在が明らかになったのだ。

今回ヒーローが見つかったのは、100億光年以上も離れた電波銀河53W002の近くだ。ヒーローは、映画などに登場するヒーローのようにとても速いスピードで我々から遠ざかっている。そのため、天体から発せられた光の波長が赤方偏移によって長くなり、元の色よりも赤く(波長が長い側にずれて)見えているのだ。

ヒーローはひじょうに遠くにあることから、宇宙が誕生して間もない頃の星や銀河の姿を見せてくれていると考えられる。本来の色は、激しい星形成を示唆する豊富なガスやダストのために赤いかもしれないし、年老いて赤くなった星が多いために赤いかもしれない。ひょっとすると、実はこのヒーローの正体はもっと遠くにある若い星でいっぱいの生まれたての若い銀河で、本当は青いかもしれない。

いずれにせよ、その正体を暴くことで、宇宙のもっとも初期の星や銀河についてより多くのことがわかるに違いない。研究グループは今後さらに長い波長でヒーローを観測し、その正体に迫ろうとしている。

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