反射X線で捉えた銀河系中心のブラックホールの過去の輝き

【2002年11月5日 宇宙科学研究所

宇宙科学研究所と京都大学の研究グループが、銀河系中心の大質量ブラックホールがかつてとても明るかったことを示す証拠を突き止めたと発表した。

(いて座B2領域の画像)

いて座B2領域の画像。破線は低温ガスの広がりを表している。このB2領域のほか、電波アークといて座Cの3つの領域から反射X線が見つかった(提供:宇宙科学研究所 / NASA / CXC)

研究グループは、日本のX線観測衛星「あすか」とNASAのX線観測衛星「チャンドラ」を用いて銀河系の中心付近を観測し、銀河中心から350光年離れたところにあるいて座B2と呼ばれる領域の低温ガスがX線を反射しているようすを観測した。

低温ガスは銀河の中心方向に近い側だけが光って見えているので、おそらく銀河中心にある天体に照らされていると考えることができる。さらに、計算によればその中心にある天体は(X線で観測して)太陽の100万倍もの明るさであることがわかった。これは、この中心天体がブラックホールである強い証拠となる。

中心のブラックホールから放射されたX線が離れた天体を照らすまでにかかる時間はその間の距離と同じになる(X線は電磁波なので光速で進む)。つまり、350年前には中心のブラックホールは太陽の100万倍明るく輝いていたということだ。また、中心から90光年、240光年離れたところから反射X線が観測されているが、これらの明るさは350光年離れたいて座B2領域よりも暗い。これは、中心のブラックホールはじょじょに暗くなっているということを示している。

今回の研究では、低温ガス雲からの反射X線を観測することでブラックホールの過去の活動のようすを明らかにすることができた。今後、同様の手法により私たちの銀河系の中心にあるブラックホールについての理解がさらに進むことが期待される。また、宇宙にたくさんある他の普通の銀河の中心にも同じようにブラックホールが存在する可能性も示唆された。今年のノーベル物理学賞受賞者の一人、R. Giacconi氏はX線天文学の基礎を築いた人物であるが、今後もX線天文学はさらに新たな世界を私たちに見せてくれることだろう。