地上観測では初めて褐色矮星からの赤外線が検出された

【2002年8月8日 ESO Press Release

ESO(ヨーロッパ南天天文台)のラ・シラ観測所にある3.6m望遠鏡を使った褐色矮星の観測で、地上観測としては初めて、赤外線が検出された。

(異なる3波長で撮影した褐色矮星の画像)

褐色矮星 LP 944-20の画像。左からB波長(青色)、R波長(赤色)、赤外線波長のもの。他の天体の写り方と比較すると、赤外線波長で明るいことがよくわかる。この褐色矮星は老齢のためディスクが存在していないようだ(提供:STScI Digitized Sky Survey, AURA / ESO)

研究グループは8個の褐色矮星を観測、うち2つから中間赤外線が放射されていることを発見した。衛星による観測ではこれまでにも検出されていたが、地上からはこれが初めてということである。

褐色矮星とは、核融合反応を起こして光り始めるのに必要な質量(太陽の8%程度)よりも軽い天体で、木星のような大型惑星と恒星の中間のような存在である(とはいえ、もっとも軽くても木星の75倍も重い)。1963年に理論的にその存在が予測されたが、褐色矮星があまりにも暗すぎるため、実際に観測されたのは1995年になってからである。現在ではオリオン大星雲の中などに多数見つかっており、全部で数百個ほどの存在が知られている。

その褐色矮星がどのようにしてできあがってきたのかについてはさまざまな説がある。普通の恒星と同じように、ガスやチリでできた星間雲が重力によって収縮してできたという説や、非常に若い星と大質量星の連星系で、若い星の周りのガスがはぎ取られてそれ以上質量が増えなくなったという説などである。近年の衛星による観測などから、褐色矮星も普通の恒星と同じように星間雲からできるという説が有力になってきている。これは、褐色矮星の周囲に赤外線放射の超過が見られ、おそらくチリのディスクから放射されていると考えられるからだ。ディスクがあるということは、普通の恒星と同じような形成過程を経るだろうと考えられる。

観測結果をもとにしたモデルでは、褐色矮星のディスクは普通の恒星のものとは形状が違うことが予想されている。また、若い褐色矮星にはディスクが見られるが歳をとったものには見られないという観測結果もある。褐色矮星が地上からも観測できるようになったことで、今後、褐色矮星の形成と進化の研究が大いに進むだろう。

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