生まれたての太陽系は空飛ぶ円盤にそっくりだった

【2002年5月15日 ESO Press Release

ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(The Very Large Telescope)などを使って分子雲の観測を行っていた研究者たちが、若い恒星とその周囲のチリの円盤を偶然発見した。生まれたての太陽系のようすを見ていると考えられているその恒星の姿は、まるで「空飛ぶ円盤」のようである。

(VLTが撮影した若い恒星の画像)

へびつかい座ρ領域に見つかった若い恒星。VLT ANTU望遠鏡にISAACカメラを取り付けて撮影された(提供:ESO)

この恒星は、地球から500光年離れた「へびつかい座ρ領域」という分子ガスが集まった領域の周辺部で見つかった。表面温度は3000度で、生まれてからまだ100万年ほどしか経っていないとみられる非常に若い恒星である。その周辺に観測されたガスやチリの円盤は、少なくとも木星の2倍(地球の600〜700倍)の質量があり、約450億km(海王星軌道の5倍)の半径まで広がっているようだ。

この像ではガスやチリの円盤を真横から見ているため、中心の星からの光が遮られ、上下を分ける黒い帯として見えている。上下の部分は、恒星からの光が円盤中の粒子によって散乱・反射されて見えているのである。上から放射されている赤外線が下よりもはるかに強いという観測結果が得られたが、その原因についてはまだわかっていない。

生まれたての星が多く見つかる星形成領域と呼ばれる部分(オリオン大星雲など)では、若い星の周りに円盤ができあがっても近くにある大質量星からの強い放射のために円盤が壊されてしまう可能性が高いが、今回の星は分子ガス雲の周辺領域で見つかったので、円盤が破壊される危険はない。我々の住む太陽系は今回観測されたようなガスやチリの円盤からできあがったと考えられており、今回見つかった恒星はまさに「生まれたての太陽系」の姿をあらわしていると考えられている。さらに詳しい観測を行うとともに似たような恒星を数多く探して観測することで、太陽系がどのように形成されたのかを調べたり惑星形成の条件を調べたりすることができるだろう。