中性子星よりも高密度な天体はクォークでできた星か?

【2002年4月15日 Chandra Photo Album

NASAのX線観測衛星チャンドラによる観測で、普通の中性子星とは違った天体が2つ見つかった。一方は中性子星にしては小さすぎ、もう一方は温度が低すぎるのだ。ひょっとすると、陽子や中性子を構成する「クォーク」でできている星かもしれない。

高密度天体 RX J1856.5-3754(提供:NASA / SAO / CXC / J. Drake et al.)

中性子星 3C58(提供:NASA / SAO / CXC / P. Slane et al.)

チャンドラとハッブル宇宙望遠鏡で「みなみのかんむり座」にある天体 RX J1856.3-3754を観測したところ、この天体の直径がたった11.3kmしかないことがわかった。これは、超新星爆発のあとにできる非常に密度の高い天体、中性子星よりもずっと小さく密度が高い。研究者たちによると、この天体は「クォーク」でできているのかもしれないらしい。クォークとは、陽子や中性子を構成する最小単位となる粒子のことで、地球上の実験室以外で観測されたことはない。もし本当にクォークで構成されている天体だとすれば非常に興味深い結果である。

一方、「カシオペヤ座」にある天体 3C58は、1181年の超新星爆発の時にできたと考えられている。(この爆発は日本の「明月記」に記録されている。)予想されるX線の放射が観測されなかったことから、研究者たちは「3C58は100万度よりも低温である」と結論づけた。中性子星がどのように冷えていくのかという問題に対して強い制限を与える天体となるだろうが、この天体も(少なくとも一部は)クォークでできている可能性がある。

今回観測された不思議な中性子星は、原子物理学に新しい研究手段と対象を与えてくれた。原子物理学者たちは、微小な粒子であるクォークを研究するために、広大な宇宙という新しい実験室を手に入れたのだ。