チャンドラが撮影した2つの近接クェーサー

【2002年3月22日 Chandra Photo Album

NASAのX線観測衛星チャンドラの観測により、非常に接近して見える2つのクェーサー像が重力レンズ効果による「見かけ上の近接クェーサー像」ではなく、実際に別々の2つのクェーサーの像であることがわかった。

(クェーサー Q2345+007A,Bの画像)

双子のクェーサー Q2345+007A,B。(画像提供:NASA / SAO / CXC / P.Green et al.)

Q2345+007A,Bと呼ばれる「うお座」の方向にあるクェーサーの像は、天球上でお互いに非常に近くにあるように見える。このように接近したクェーサーの像は、多くの場合には実際には1つだけのクェーサーからの光が重力レンズの効果を受けて2つ以上にわかれて見えているだけだ。

このクェーサーの像の場合にも、可視光や紫外線のスペクトルがとても似通っていたために、重力レンズ効果で2つに見えているのだろうと考えられていた。しかし、レンズ源となる銀河や銀河団が見つからなかったのだ。そこで次に考えられたのは、高温ガスやダークマターでできていて恒星を含まないような新しいタイプの銀河団の存在だった。このような銀河団がレンズの役割を果たしていると思われたのだ。もしこのような銀河団があれば、可視光や紫外線では見つけられないがX線でなら見ることができるはずである。

こうして、チャンドラによるX線での観測がおこなわれた。その結果、新しいタイプの「暗黒銀河団」も見つからなかったのだ。そのかわり、2つのクェーサーのX線スペクトルが明らかに異なっていることがわかった。つまり、チャンドラで観測することで「暗黒銀河団がないこと」と「2つのクェーサーのX線スペクトルが違う」ことが一緒に確かめられ、これによって2つのクェーサーは実際に別々のものであることがわかったわけである。

この近接クェーサーは、銀河同士が衝突して中心の巨大ブラックホールへと流れ込むガスのエネルギーが増大することによってできあがったと考えられている。このクェーサーが誕生した110億年前の宇宙は銀河同士の距離が現在のおよそ1/3程度しかなかったので、銀河の衝突は頻繁に起こっていたのだろう。

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