近傍銀河NGC 3190にIa型超新星2002boが出現

【2002年3月12日 VSOLJニュース 086・山岡 均(九大・理)氏】

このところ年間200個あまりの超新星が発見されていますが、距離およそ6千万光年とされるおとめ座銀河団よりも近くでは、せいぜい年に1〜2個程度しか見つかりません。今年はすでに、極超新星として騒がれている超新星2002apがおとめ座銀河団より近いものでしたが、さらにもうひとつ、おとめ座銀河団ほどの距離にある銀河NGC 3190に超新星が発見されました。この銀河はしし座の大鎌のγ星とζ星の中間にあり、この季節見やすいものといえるでしょう。

この超新星を発見したのはブラジルの天文愛好家のPaulo Cacellaさんで、発見は3月9.08日(世界時、以下同様)のことで、天体は16-7等ほどでした。この天体は9.4日UTにLick天文台KAITチームによって確認されました。また、超新星2002apの発見者である広瀬洋治さんもこの天体を独立発見したと報告されています(9.505日)。これまで報告されている光度は以下の通りです。

  20020302.399 <190C  (KAIT (from IAUC))
  20020309.080  165:C (Paulo Cacella)
  20020309.400  160:C (KAIT (from IAUC))
  20020309.505  155C  (Yoji Hirose)
  20020309.603  146C  (Y. and R. Kushida (from IAUC))

新天体の位置は、KAITチームの測定によると、赤経10時18分06.51秒、赤緯+21度49分41.7秒(2000年分点)で、母銀河であるNGC 3190の中心から東に11秒、南に14秒の位置にあります。この銀河は、渦巻銀河の円盤をほぼ真横近くから見ているものですが、近くの銀河の重力の影響で形がややゆがんでおり、暗い帯が特徴的な銀河です。超新星はこの暗い帯のすぐ近くに出現しています。

暗い帯は星間ガスやチリによる光の吸収ですから、この超新星もガスやチリの影響で暗くなっているのかも知れません。実際、9.6日に行なわれたぐんま天文台でのスペクトル観測で、この超新星は爆発後間もないIa型超新星であると判明していますが、その場合普通ならば非常に青く見えるはずの天体が、かなり赤っぽいこともわかっています。ガスやチリの吸収は青い光、つまり波長が短い光ほど影響を受けるので、吸収を受けた天体は赤っぽく見えるのです。また、Ia型超新星のなかには、典型的なものよりも暗いものがありますが、そのような暗いIa型超新星は、普通のものよりも赤いとされています。

今回の超新星2002boが典型的なIa型超新星で、吸収も受けていないとすれば、極大で12.6等程度になると予想されますが、上記のいずれの場合でも、実際の極大はもう少し暗いものになるでしょう。しかし、私たちに近い天体なので、中口径の望遠鏡でCCD観測可能な時期も長いと見込まれます。今後の観測が注目されます。