マーズ・オデッセイ、本格的な運用を開始

【2002年3月4日 JPL 2002 News Releases

先月末より本格的な観測を開始したNASA JPL(ジェット推進研究所)の火星探査機マーズ・オデッセイから送られてきたデータが公開された。それによると、火星にはかなりの量の凍った水が存在するようである。

(火星の南極付近における中性子強度の分布を示した図)

火星の南極側から観測した熱外中性子(比較的高エネルギーの中性子)の強度分布。青は弱く赤が強い。極付近が青い(=中性子強度が弱い)ことから、このあたりの土壌中に水素が多く含まれていることがわかる(画像提供:NASA / JPL / University of Arizona)

まずはマーズ・オデッセイのカメラからみてみよう。このカメラでは火星表面の温度分布を調べたり鉱物の分布を調べたりすることができる。熱放射を測定するカメラでは従来の30倍も鮮明な画像が得られるようになった。また、可視光のカメラは、バイキング衛星による画像とマーズ・グローバル・サーベイヤーによる画像の間の解像度で観測し、それらの画像の隙間を埋めてくれることが期待されている。

次はガンマ線分光装置による最初の結果である。水素から放射されるガンマ線の強度、および水素によって和らげられた中性子の強度、この2つの測定結果から、火星の南極付近には大量の水素が存在することがわかった。(中性子の強度の測定は、高エネルギー中性子検出器や中性子分光装置でおこなわれた。)解析をおこなった研究者によれば、水素は地表の上層数メートルのところに、幅600km以上にわたって分布しているようだ。観測された水素は、おそらく南極付近にある水の氷に由来するものだと思われるが、氷の量はまだわかっていない。今後、解析と観測がさらにすすめば、氷の量や水素の由来についてもっと詳しくわかるだろう。

最後に放射環境を検証する装置による結果も見てみよう。この装置では宇宙線などの強度を調べるのだが、それによると、地球から火星へと宇宙飛行士が向かう際に浴びる1日あたりの放射量は国際宇宙ステーションで浴びる量の2倍以上だということだ。将来、人が火星へと向かう時代が来た時、この強い放射をいかにして回避するかについて十分な対策が必要となりそうだ。

まだ本格的な運用から10日ほどしか経っていないが、早くも鮮明な画像や大量の水素の存在を示すデータなどを送ってきたマーズ・オデッセイ。今後も多くの発見や興奮をもたらしてくれるだろう。なお、ニュースのリリース元では、他の鮮明な画像や鉱物の分布図、放射強度を示す図などを見ることができる。