新しい小惑星二つの話題

【2001年10月25日 国立天文台天文ニュース (489)

最近発見されたアモール型小惑星2001 OE84の自転周期が29.190分であることがわかりました。これはこの小惑星が破片の集合ではなく、一体構造であることを示すものです。また、やはり最近発見されたカイパーベルトの小惑星2001 QT297が連星であることも突き止められました。

2001 OE84は、2001年7月27日に、ジェット推進研究所のNEATチーム(Near-Earth Asteroids Tracking programme)が「くじら座」に19.4等の明るさで発見した、火星軌道より内側にまで到達するアモール型の小惑星です。直径は0.9キロメートル程度と推定されます。チェコ、オンドリヨフ天文台のプラベク(Pravec,P.)たちは10月15日、16日の二晩この2001 OE84の光度観測をおこない、0.6等の振幅をもつ光度変化から、その自転周期がたったの29.190分であることを確認したのです。

 

小惑星マチルド(写真提供:NEAR)

小惑星の中には、衝突などでいったん破砕した破片がふたたび集積した構造をもつものがあると推定されています。たとえば、平均密度がたった1立方センチ当たり1.3グラムしかない小惑星(253)マチルドなどは、その構造の候補天体と考えられます。仮に小惑星がこのような集積構造をしていたとすると、速い自転はできません。自転による遠心力が小惑星をばらばらに壊してしまうからです。しかし、観測された2001 OE84の自転速度はこの制限を越える速さで、ここから、2001 OE84が一体構造でなければならないと結論されたのです。一般にこれだけの自転速度をもつ小惑星はほとんどありません。キロメートル程度の大きさをもつ小惑星で、自転速度から一体構造であることが証明されたのは、この2001 OE84が初めての例です。

一方、2001 QT297は、2001年8月20日、チリ、セロトロロ天文台で、ミリス(Millis,R.L.)たちが21.0等の明るさで「やぎ座」に発見した、エッジワース・カイパーベルト天体です。

マサチューセッツ工科大学のエリオット(Elliot,J.L.)たちは、チリ、ラス・カンパナス天文台の口径6.5メートル、バーデ望遠鏡を使って、10月11日、12日の二晩の観測をおこない、この2001 QT297が連星であることを発見しました。主星と伴星の光度差は0.55等しかありません。カイパーベルト天体の連星は、1988 WW31についで2個目の発見と思われます(天文ニュース433参照)。

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