2001 KX76 が最大の小惑星に

【2001年8月30日 国立天文台天文ニュース (470)

この5月に発見された天体2001 KX76は、少なくとも1200キロメートルの直径をもつことがわかりました。これは、惑星、衛星以外の太陽系天体としてはもっとも大きいものです。その結果、950キロメートルの直径をもつ 小惑星ケレスは、1801年の発見以来200年間保ち続けていた「最大の小惑星」の座を明け渡すことになりました。

2001 KX76は、セロトロロ天文台のエリオット(Elliot,J.L.)たちが、2001年5月22日に口径4メートルのブランコ望遠鏡を使って19.0等の明るさで「 さそり座」に発見した、いわゆる エッジワース・カイパーベルト天体のひとつです。7月2日にこの天体が異常に大きい可能性を指摘したのは、 ローエル天文台のミリス(Millis,R.)たちのグループでした。そこで、さっそく、その大きさを正確に決める作業が始められました。

太陽系天体の大きさを知るには、明るさを測るだけでなく、距離を正確に決め、また反射率を測定する必要があります。距離を知るには軌道を決めなければなりません。しかしカイパーベルト天体は距離が遠いので、短期間の観測で正確な軌道を決めるのは困難です。ここで有効な働きをしたのはアストロバーテル (Accessing Astronomical Archives as Virtual Telescopes; Astrovirtel)と呼ばれる仮想望遠鏡でした。

詳しくは述べ切れませんが、簡単に説明するなら、アストロバーテルとは、たくさんの天文台で過去に観測した膨大なデータから、必要なデータを探し出して天文学者に供給する組織です。その効果は絶大でした。2001 KX76のかすかな像は過去のいくつもの乾板上で発見され、もっとも古いのは1982年のものでした。この18年にわたるデータから軌道決定がなされ、2001 KX76の距離は地球から43天文単位であることがわかったのです。すでに決定されているカイパーベルト天体ヴァルナの反射率7パーセント(天文ニュース445)を使うと、2001 KX76の直径は1200キロメートルになります。氷でできている彗星核の代表的な反射率4パーセントを使うと1400キロメートルになります。このような背景から、現段階で、2001 KX76は太陽系最大の小惑星となったのです。

本質的にカイパーベルト天体のひとつと考えられている 冥王星の直径は2300キロメートルです。今後、冥王星より大きいカイパーベルト天体が発見されるかもしれません。

<参照>

<関連ニュース>