皆既日食を利用して太陽の謎に迫る

【2001年6月18日 BBC News (2001.06.14)

2001年6月21日(日本時間)、アフリカ中部各地で21世紀最初の皆既日食が起こる。皆既日食とは、月が太陽をすっかり隠してしまう現象で、このときには、普段は見ることのできない、美しく荘厳なコロナが見られる。天文ファンであれば、絶対に一度は見ておきたい光景だろう。

コロナとは、太陽を取り巻く希薄な高温ガスの層で、いわば太陽の大気である。温度は、100万〜200万ケルビンもあり、これは太陽表面の温度が約6000ケルビンなのに比べて遥かに高い。しかし、何がコロナをそれほどの高温に熱しているのかは、ここ半世紀来の謎である。

太陽に似た恒星は宇宙のいたるところにあり、それらもまた高温のコロナを持つことが知られている。したがって、もし太陽のコロナの謎が解明されれば、他の恒星に対する理解もずっと深まることになる。

ラザフォード・アップルトン研究所 (イギリス) に所属するKen Phillips教授らは、皆既日食の観測から、このコロナの謎に挑もうとしている。

現在、コロナの熱源としては、2つの可能性が考えられている。ひとつは太陽表面からのエネルギー波 (waves of energy) で、もうひとつはナノフレアと呼ばれる小規模な太陽面爆発現象である。

Phillips教授らは、1999年の皆既月食をブルガリアで観測している。「私たちは、とても高速なCCDカメラを持っているんです。少しビデオカメラに似ていますね。(1999年の観測では) とても良い観測結果をある程度得ることができました。ただし、現在も分析中です。」と、Phillips教授は語っている。これまでの分析で、エネルギー波が熱源の一部ではあるが、主要な熱源ではないということがわかっているという。

教授らは、ザンビアにて2001年の皆既日食の観測にのぞむ。今回は太陽活動の極大期、つまりコロナの広がりの最大期にあたるため、1999年の時よりも条件は良い。教授は今回の観測により、ナノフレアこそがコロナの主要な熱源ではないかという自らの考えを支持する証拠を得ることを目指している。

なお、20世紀初めの1919年の皆既日食の際には、歴史的な発見がなされている。

イギリスの天体物理学者であるArthur Stanley Eddington氏などが、皆既中に太陽の近くの恒星の位置を測定し、恒星の位置が太陽の重力場の影響でずれていることを確かめた。これによりアインシュタインの一般相対性理論が正しいことが確認されたのである。