時の記念日に考える − 短波JJY終了後の時刻取得 −

【2001年6月10日 アストロアーツ】

3月31日名崎送信所

天体観測における時刻取得のひとつの方法として、長年利用されていた無線報時である短波の標準電波JJYの送信が、2001年3月31日正午をもって停止された。短波JJYの電波は、総務省通信総合研究所により、5、8、10メガヘルツの周波数で茨城県三和町にあるNTT名崎無線送信所から24時間連続で送信されていたものである。テレビやラジオ局など、公共性の高い施設はもちろん、さまざまな場面で時刻や周波数の基準として、半世紀にわたって利用されてきた。

その電波は短波ラジオで手軽に受信可能で、基本的には秒ごとに「ピー」という発信音で時刻を知ることができた。また20分ごとには音声アナウンスによって、日本標準時が告げられていて、星食や接食など現象の起きた時刻を正確に測定する観測には、たいへん有用なものだった。

しかし、短波JJYは外国の標準電波との混信や、国内でも電波の届きにくいところがあること、さらに高い精度を持つ標準電波の必要性が指摘されていた。そこで、この短波JJYに替わるものとして、1999年6月10日に福島県の大鷹鳥谷山(おおたかどややま)から、40キロヘルツの周波数で長波JJYの送信が開始されている。電波時計の名称で販売され、時刻補正を自動的に行う時計がこの長波JJYを利用したものだ。

今後、天体観測において正確な時刻を取得するためには、この長波JJYやカーナビでおなじみのGPSを利用した時刻取得システムなどを確立しなくてはいけないだろう。

とはいえ、残念ながら長波JJYを利用した電波時計は、日常生活ではまったく問題ない精度を有するが、一般に市販されている安価な電波時計では受信回路の機構上、どうしても時刻表示の遅延が起こり、星食や接食、地球近傍を通過する小惑星の精測などきわめて正確な時刻を必要とする天体観測にはじゅうぶんな精度が得られない。

またGPSを利用した時刻取得システムは、たいへん高精度だが、従来の短波JJYと同様に利用するには市販されている安価な機器が存在せず、アマチュアの天体観測での簡易な利用は難しい状況である。とはいえ、GPSを利用した天体観測用時計の自作例も少なくない。こうしたGPS時計については、「せんだい宇宙館」のホームページ内「超高精度「GHS時計」の紹介。」に詳しい説明があるので、興味のある人は参考にしてほしい。

さて、長年にわたって利用し続けてきた観測者にとって、短波JJYの廃止は寂しい限りだが、これも時代の流れなのだろう。すでに短波JJYの音は聞こえなくなってしまったが、アストロアーツでは総務省通信総合研究所の許可を得て、停止前に録音した音声ファイル(mp3形式)、並びに3月31日の短波JJY停止のようすを発信元であるNTT名崎送信所(茨城県猿島郡三和町)にて収録した動画ファイル(mov形式rm形式およびmp3形式)を公開することとなった。

短波JJYの音を懐かしむ人も、一度も聞いたことがない人も、時の記念日ということで、ぜひとも聞いていただきたいものである。

短波JJY放送停止時の動画ファイル

リアルプレーヤー形式
1.15MB, 2分4秒間
ムービー形式
1.60MB, 2分4秒間

2001年3月31日正午前にNTT名崎送信所にて収録した、
短波JJY放送停止時の動画ファイル

mp3 形式 (音声のみ)

短波JJY放送停止前に収録した、短波JJYの音声ファイル
505KB, 2分9秒間
(放送された音声を録音しているものなので、
ノイズが多い点はご了承ください)

音声提供:総務省通信総合研究所

  • リアルプレイヤー形式のファイルを再生するには、Real Player 8が必要となります。
  • ムービー形式のファイルを再生するには、Quick Time Playerが必要となります。
  • mp3 形式のファイルを再生するには、MPEG3 に対応したプレイヤーが必要となります。

<関連サイト>

<関連ニュース>