木星探査機ガリレオによる明るい変光星の発見

【2001年3月29日 NASA JPL (2001.03.21)

1989年10月18日に打ち上げられたNASAの木星探査機ガリレオは、木星に向かう途上にあった1989年11月、姿勢の確認のために観測していた明るい恒星のひとつ「ほ座δ (デルタ) 星」を突如、見失った。

はじめ、探査機に何らかのトラブルが生じた可能性が考えられたが、1週間ほど探査機の状態を見守った結果、探査機は正常に動作していたと結論された。

すると、恒星の明るさが変わったために見失った可能性が出てくる。変光星は珍しい存在ではない。しかし、「ほ座δ星」は北極星よりも明るい恒星であり、今まで変光が見落とされているとはとても考えにくい。

しかし、そのまさかであった。1997年になって、アルゼンチンのアマチュア観測者Sebastian Otero氏が、「ほ座δ星」の減光を確認することに成功したのだ。そして追跡観測の結果、「ほ座δ星」が約45日周期の食変光星であると結論された。

食変光星とは、2つの恒星がお互いをめぐり合う面が、地球から見たときに偶然にもほとんど真横にであるために、恒星どうしが視線方向上に重なり合うことがあり、そのときに明るさが暗くなるというタイプの変光星で「ペルセウス座β星アルゴル」がその代表。

「ほ座δ星」の場合、5個以上の恒星からなる近接連星であることが以前から知られていたが、このうちもっとも明るい星は、じつは2個の同程度の明るさの恒星であり、その2つが重なり合ったときに最大約30%の減光が生じるのだ。ガリレオの制御プログラムは、「ほ座δ星」が変光星ではないことを前提に設計されていたため、暗くなった際に見失ったというわけだ。

減光が起こるのは45日ごとのわずか数時間であるから、見落とされていたのも無理はないが、これだけ明るい恒星が変光星であることが今まで見落とされていたのは驚きべきことだ。もしかしたら、同様の未発見の変光星がまだまだ存在しているのかもしれない。

ガリレオは、木星系の探査のみに焦点を絞った探査機である。太陽系外の天体に対するこの発見は、うれしいボーナスとなった。