すばる望遠鏡の本格運用開始がいよいよ近づく

【2000年11月15日 国立天文台 (2000.11.14) 】

ハワイ・マウナケア山頂に設置された口径8.2メートルのすばる望遠鏡 (国立天文台 ハワイ観測所) は、ファーストライトから1年半の性能の追い込み作業の結果、当初の仕様を達成するとともに格段の安定性が発揮されている。

いよいよ12月4日からは、共同利用運用がはじまる。これは、日本全国そして世界の研究グループから観測計画を応募し、そのうち優れた計画に対して観測時間を割り当て、時間が割り当てられたグループが訪れて観測を行なうというものだ。調整や試験観測と異なり、装置のトラブルや非効率的な運用は許されず、つねに最大効率・最高性能を期待される「本格運用」である。

すばる主焦点広視野カメラSuprime-Camによる広視野カラーイメージ

すばる主焦点広視野カメラSuprime-Camによる広視野カラーイメージ
左はSuprime-Camによる視野を月の平均視直径と比較したもの、右は画像から新たに発見された銀河団の拡大図

共同利用運用開始に向け、すばる望遠鏡の7つの第一期観測装置はすべてファーストライトを経験し、性能の追い込みが進んでいる。2000年12月から2001年3月までのS00期共同利用では、すでに性能の追い込みが完了し本来の性能が確認されたすばる主焦点広視野カメラSuprime-Cam、近赤外線冷却撮像分光器IRCSの2つの機器が共同利用に供される。続く2001年4月から2001年7月までのS01A期共同利用では、近赤外線冷却撮像分光器IRCS、可視光微光天体撮像分光器FOCAS、可視光広分散分光器HDS、OH夜光除去分光器OHS、近赤外カメラCISCOの5つの機器が共同利用に供される。

S00期共同利用には、114件のプロポーサル (観測提案書) が応募され、うち審査を通過した26件 (うち外国人主体の研究が3件) のプロポーサルに対し計36夜が共同利用時間として割り当てられた。共同利用時間以外は、4月からのS01A期共同利用に向け、望遠鏡と観測装置の最終的な性能確認が進められることになる。

なお、S00期共同利用は当初2000年10月からを予定していたが、2か月遅れた。遅れの主な理由は主鏡固定点が剥離するというトラブルであるが、現在は修理され、トラブル発生以前と変わらない性能を発揮している。

上の画像は、すばる主焦点広視野カメラSuprime-Camによるものだ。この観測装置は、4096x2048画素の大きなCCDを10個並べた8000万画素のデジタルカメラだ。中空にある主焦点に設置され、満月とほぼ同じ面積に相当する24分角(1分角=1/60度)四方の広い範囲を一度に撮影することができる。画像左は、Superime-Camの視野を月の平均視直径と比較したものである。口径4メートル以上の大型望遠鏡のなかでこのような広い視野の観測装置を備えるのは、いまのところすばる望遠鏡だけである。

Suprime-Camは、視野が広いだけでなく、角分解能にも優れており、最高では0.3秒角 (1秒角=1/3600度) という角分解能を達成している。ただし、角分解能は大気の状態に左右されるため、この画像の角分解能は0.6秒角となっている。さらに、光を受ける効率も高く、望遠鏡が一点に集めた光のうちの70%を検出することができ、肉眼で見える星の1億倍以上も暗い天体をとらえる能力を持つ。

Suprime-Camの開発グループは、装置の調整と並行して、Weak lensingと呼ばれる手法による宇宙の大規模構造の研究を行なっている。Weak lensingとは、遠方にある銀河の像がより手前にある銀河の重力によりゆがめられているということを利用し、遠方の銀河の形状を多数観測することにより、より近い銀河の質量を推定する方法であり、この手法により宇宙の広い領域における質量分布を求めることができる。

この画像には、太陽系から約100億光年の彼方までにある3万個以上もの天体がとらえられている。そのうち縦に伸びる光条を持つ天体は、私たちの銀河系内にある恒星である。この光条は、恒星の像が明るすぎるためにCCDの上を電荷が溢れ出した跡である。その他の多数の天体は、はるか彼方にある銀河である。このように多くの銀河の姿を詳細にとらえることのできるSuprime-Camは、Weak lensingによる研究を行なうための最適な機器といえる。

さらにこの画像からは、これまで発見されていなかった銀河団が発見されている。銀河団とは50個より多い銀河が約1000万光年の領域に集まったものである。太陽系から今回発見された銀河団までの距離は、およそ50億光年と見積もられている。

すばる望遠鏡はファーストライト時から高い性能を発揮しており、ガンマ線バーストの余光の観測、OHSを用いた遠方の電波銀河の観測など、すでにその性能を活かした成果を上げてきている。いよいよ共同観測利用がはじまれば、次々と貴重な科学的成果が上がることだろう。日本が誇るすばる望遠鏡の今後の活躍に期待したい。

画像提供: 国立天文台

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