中性子星はこれまで考えられてきたよりずっと年老いている

【2000年7月19日 SpaceDaily (2000/7/17)

1万6千年前に形成されたと考えられていたパルサー(中性子星)を電波望遠鏡を用いて観測した結果、このパルサーが少なくとも4万年前、もしかしたら17万年前に形成されたことがわかり、パルサーに関する基礎理論、さらには物質に関する基礎理論の信頼性が揺らいでいる。

中性子星は、かつての巨大恒星のなごりだ。太陽よりずっと大きな恒星は、壮絶な超新星爆発によりその一生を終え、跡には超新星残骸と呼ばれる星雲と、その中心には中性子星と呼ばれる超高密度の天体が残される。中性子星は高速で自転しており、中性子星のうちの一部からは、短い周期で規則的に信号が観測されるため、パルサーとも呼ばれる。

中性子星の年齢の推定には通常、自転速度の変化を検出するという方法が用いられる。中性子星の強力な磁気圏は、大規模な発電装置として働き、中性子星が自転するにしたがって電磁放射を行なっている。放射によりエネルギーが失われ、中性子星は徐々に自転速度を失ってゆく。この理論は30年近くも標準的な理論として用いられてきた。

問題の中性子星はB1757-24と呼ばれるもので、「いて座」の方向1万5千光年ほどの距離にある。自転速度の変化からは、1万6千年前に形成されたものであると推定されていた。この中性子星は、超新星残骸の中心から外に向かって高速で移動しており、現在ちょうど超新星残骸の外層を超えた位置にある。中性子星が移動しているのは、超新星爆発の爆圧が均一でなかったためで、超新星爆発時に爆圧が弱かった方向に押され、以後、惰性で漂っているわけだ。

Bryan Gaensler氏(マサチューセッツ工科大学; MIT)およびDale Frail氏(アメリカ電波天文台; NRAO)は1999年、アメリカ・ニューメキシコ州の超巨大干渉電波望遠鏡(VLA)を用いてこの中性子星を観測した。その観測結果と、1993年の同じVLAによる観測結果を比較して、中性星の移動速度を計測した。中性子星が16,000年前に形成されたものならば、移動速度は秒速1,000マイルほどであるはずだったが、計測された移動速度は、わずか秒速350マイルだった。移動速度が遅いということは、中性子星が現在の位置に至るまでにずっと長い時間を要するということであり、したがってこの中性子星は、考えられていたよりもずっと年老いているということになる。

Gaensler氏は、「この新事実は、我々が中性子星やパルサーに関して理解したと思っていたことの、多くが間違っているということを示している。中性子星は宇宙で最も高密度な天体のひとつであり、それに関する研究は、物質に関する最も基本的な理論の正しさを検証する上で重要なものだ。それらの理論が正しいとすれば、中性子星の年齢は正確に推定できなくてはならない。しかし、私たちが発見した新事実により、中性子星が実は推定より10倍も年老いているかもしれないことが明らかになった。我々は多くのことを再検証する必要があるだろう。」と語っている。

なお、研究の詳細は、科学誌『ネイチャー』の7月13日号で報告されている。