クォークの分離に成功(続報)

【2000年2月23日 (Yahoo! News, 2000/2/9)

ヨーロッパ素粒子物理学研究所(CERN)の物理学者チームは、ビッグバンから10万分の1秒後の状態を再現することにより、陽子や中性子を構成する基本粒子といわれるクォークの分離にはじめて成功した。( 速報・「新しい物質形態の生成に成功 」より)

CERNの研究チームは独自の実験装置を用いて、太陽中心の温度(1500万度)よりも約10万倍も高い温度という、世界中の実験室ではこれまでに達成されたことのない高エネルギー密度の状態で素粒子を衝突させることにより、これまで理論的にしか予言されていなかったクォークと呼ばれる基本粒子を分離させることにはじめて成功した。

すべての物質を構成する原子は、陽子、中性子が核となり、その周囲を電子が覆うというように、3種類の粒子の組み合わせで構成されていると考えられてきた。しかし1950年、1960年代、強力な加速器に出現によってこれ以外にもたくさんの種類の粒子が発見され、1970年代の実験ではこれらのたくさんの粒子はクォークと呼ばれるより小さな粒子が結合してできていることが証明された。クォークには現在アップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、トップ、ボトムの6種類が知られている。しかしこれらのクォークを1個ずつ引き離すのは難しいとされていた。

CERNでは1994年代から衝突型の大型加速器SPSを用いた実験計画が進められてきた。標的に鉛イオンを衝突させることで超高温状態を作り出し、衝突の様子を7種類の実験装置で調べたところ、クォークとその「のり」の役割をするグルーオンがばらばらになっている状態を作り出すことに成功した。

この状態は「クォーク・グルーオン・プラズマ」とよばれており、宇宙のビックバンからわずか10万分の1秒後の宇宙では、このような状態にあったことが理論的に予測されていた。しかしこれまで実験による裏づけはなく、はじめてビッグバン直後の宇宙の状態を再現することに成功したといえる。素粒子物理学のみならず、宇宙誕生の謎についての研究をより進展されることになるだろう。

<ニュースソース>
Yahoo! News, 2000/2/9