X線宇宙望遠鏡「チャンドラ」の最新画像続々

【2000年2月7日】

NASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」の最近のいくつかの成果を、画像とともに紹介させていただく。


我々の銀河系の中心部のX線放射源

銀河中心部

チャンドラは、我々の銀河系の中心部にある超重量級ブラックホールの候補天体Sagittarius A*からと考えられるX線放射を捉えることに成功した(画像中心の白点)。Sagittarius A*は電波望遠鏡により1974年に発見されており、そこからのX線放射を捉えることはX線天文学の長年の課題であった。今回発見された放射はこれまで考えられていたよりもずっと弱く、研究者たちを驚かせている。ただ、銀河中心は銀河外縁の百万倍もの密度で天体がひしめいているため、今回発見されたX線放射がSagittarius A*からであると完全に断定することはできない。真相解明にはより多くのデータが必要になる。

Chandra Discovers X-ray Source at the Center of Our Galaxy


煮えたぎるスターバースト銀河 (M82)

スターバースト銀河M82

スターバースト銀河とは爆発的に星が形成されている銀河のこと。地球から1100万光年の距離にあるM82は最も近いスターバースト銀河で、そこでは我々の銀河の10倍のペースで星が形成されている。スターバースト銀河で形成される星は寿命の短い巨星が多く、それらはその寿命が尽きるときに超新星爆発を起こし、周囲のガスを数百万度にまで熱し、さらにその跡にはブラックホールや中性子星が生まれる。

今回のチャンドラによる観測で、その詳細な構造が明らかになった。この画像の中央の明るい点群は超新星残骸やX線連星たち。これらの超新星残骸やX線連星は知られている中でもっとも明るいものに含まれる。その明るさから、これらのうち多くのX線連星にはブラックホールが含まれると考えられる。この画像に広がる拡散したX線放射は、M82から流出する数百万度もの高温ガスによるもので、何千光年にもわたって広がっている。

Chandra Images the Seething Cauldron of Starburst Galaxy


超新星残骸に酸素とネオンから成るリングを発見

リング状超新星残骸

チャンドラは超新星残骸E0102-72に酸素とネオンからなる拡散中のリング状構造を発見した。E0102-72は、地球から20万光年ほどの距離にある小マゼラン星雲内に位置し、我々の太陽の10倍以上の質量を持つ恒星の超新星爆発により形成された。爆発からは1000年以上が経過している。

チャンドラは、高エネルギー伝送格子スペクトル分析器(High Energy Transmission Grating Spectrometer, HETG)により対象天体を構成する化学元素を分析することができ、また同時に、ドップラー効果を分析することにより天体の個々の部分の速度を知ることもできる。

超新星残骸の詳細なX線による情報が得られたのは今回がはじめてで、超新星爆発という現象を研究する上で非常に重要な成果が得られたことになる。そして超新星爆発に関する研究は、地球のように生命を持つ惑星が誕生する上で必要な重元素の生成と分散の過程を知る上で重要な研究だ。

Chandra Finds Oxygen and Neon Ring in Ashes of Exploded Star


オリオン大星雲に非常に多数の星を発見

オリオン大星雲中心部

オリオン大星雲の中心部を撮像したこの画像には、弱いX線を放出する約1000個もの若い星々が写し出されている。X線は、これらの恒星の数百万度にも達する高温の上層部から放出されていると考えられる。地球から約1800光年ほどの距離にあるこの星団は、大きな星形成領域としては最も近いもの。この画像に写し出されているのは、およそ10光年ほどの領域。中央の明るい星々は、トラペジウムとして知られている100万歳以下の非常に若い星の集まりの一部。これだけのX線源がひしめく領域が発見されたのは、X線天文学史上はじめて。今回の成果は、星の形成と進化を理解する上で非常に重要。

Chandra Finds X-ray Star Bonanza in the Orion Nebula