エータ・カリーナ星雲の光と影

【2000年2月3日 (Space Science Update, NASA, STScI, 2000/2/3)

ハッブル宇宙望遠鏡により撮像された、南天に輝くエータ・カリーナ星雲(NGC 3372)内の「鍵穴星雲」と呼ばれる領域の美しい画像が公開された。光と影が複雑に入り組んだ様子を堪能していただきたい。

鍵穴星雲

この画像は1999年4月の4回の異なる観測から合成されたもの。撮影には広視野惑星カメラ2が用いられ、6種類のカラーフィルターが使用された。

この画像を特徴付けるのは、大きな円形構造で、これは「鍵穴星雲」の一部。この領域は地球から8千光年の距離にあり、有名な爆発型変光星であるエータ・カリーナがこの画像から少し右上に出たところに位置している。エータ・カリーナを取り巻く星雲は、ほかにも数個の最高温・最重量級の恒星を含んでおり、それらはそれぞれわれわれの太陽より10倍熱く、100倍重い。

円形の「鍵穴」構造は、発光するガスの熱いフィラメントと、冷たい分子やチリからなる暗黒雲からなり、それらは高速にカオス的な運動を行っている。このハッブルによる高解像度画像により、これらの3次元的な構造が多く解明された。また、新しい星が誕生する過程で押しつぶされつつあると考えられる多数の暗黒小球も発見された。

中央下と画像左上に鋭いエッジを持った暗黒雲があるが、前者はリングの中にあり、後者は外にある。後者はこの画像よりかなり左上に出た部分にある明るい重量級の星に向かっているようだが、その星からの高エネルギー放射と高速に放出される物質がこの暗黒雲を形成したようだ。これらの暗黒雲は、十分な密度があればそこに小さな星団が生まれるが、そうでなければゆくゆくは消滅することになる。

全体の直径が200光年以上にもなるエータ・カリーナ星雲は、南天の銀河の驚異に満ちた事象のひとつである。この鍵穴星雲の直径は、約7光年ほどである。

なお、この画像は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した美しい画像をまとめて後世に残そうというハッブル・ヘリテージプロジェクトの一環として公開されたものだ。

<参照: ニュースリソース>
STScI-PRC00-06, February 3, 2000