最も低温のブラックホール

【2000年1月15日 NASA TodayChandra X-ray Observatory Center

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チャンドラX線宇宙望遠鏡はアンドロメダ座大星雲として知られるM31の中心部に、観測史上もっとも低温のブラックホールを発見した。これまでブラックホールの周囲をとりまくガスの温度は1000万度はあると考えられていたが、今回発見されたものは約100万度と推定されている。ブラックホールにも様々なタイプがあることが伺われる。

(左図)X線でみたM31の中心部。中央部の青い点が100万度の“低温”X線を放射している領域で、ここには太陽の約三千万倍もの質量をもつブラックホールがあると考えられている。

私たちの銀河系から約230万光年離れた場所にあるアンドロメダ銀河の中心部には、巨大なブラックホールが隠されていることが指摘されてきた。チャンドラX線宇宙望遠鏡は1999年10月、その中心部を高分解能のX線で観測し、100以上ものX線点源を発見した。その中の一つはこれまで銀河中心に位置するsupermassive型ブラックホールがあると考えられていた場所に一致したが、その温度は他のX線源にくらべてかなり低温であることがわかったのである。

光さえも脱出することができない強い重力をもつブラックホールの周囲には高温にあたためられたガスが渦巻いており、これまでその温度は最低でも1000万度はあると考えられていた。今回観測されたほとんどのX線源は、中性子星やブラックホールなど、強い重力を持つ天体と通常の恒星が連星を成すことによって、恒星からのガスが重力場に落ち込み、放射されてると考えられる。

しかし今回発見されたブラックホールは、他の100以上のX線源と異なり、一つだけ100万度という低温であることが明らかになったのである。このブラックホールからのX線放射メカニズムは、連星系からの放射モデルとは異なったものであり、銀河中心のsupermassive型ブラックホール特有の放射メカニズムが隠されているのかもしれない。

<ニュースソース>
Chandra X-ray Observatory Center Press Room