近傍銀河NGC 6951に2個の超新星が同時に見えている

【2000年1月28日 VSOLJニュース(032)】

SN2000E

数年前まで、2個の超新星が同時に見えた例は稀で、半年以内に2個が発見されたのは、1990年以前ではわずかに2例だけでした。 しかし、1990年以降このような例が急に増え、1990年代の10年間で5例も報告されています。 このうち最後の2つはvsolj-news 005と026でご紹介しましたが、今年また同様の例が発見報告されました。 しかも、この銀河はかなり近傍のもので、前に発見されている超新星1999elについてもvsolj-news 023でご紹介しています。 今回の明るい超新星2つの競演は、NGC 1316で1980-81年に見られたもの以来20年ぶりの明るさと言えるでしょう。

IAUC 7351によると、今回の超新星2000Eは、イタリアのRome天文台で1月26.73日(世界時)に発見されました。 発見時ころの明るさはV等級が14.30等、B等級が15.78等とかなり赤い天体です。 位置は、赤経20時37分13.8秒、赤緯+66度05分50.2秒(2000年分点)、銀河の中心から西に6秒、南に27秒ほどと報告されています。 また、超新星1999elからは西に28秒、南に24秒ほどです。 この位置とオフセットの間には、特に東西方向に数秒ほどの矛盾があるのですが、超新星の同定には問題ない程度です。 母銀河の周りには、手前の星がたくさん見られますが、銀河の南側には比較的少ないようです。 超新星1999elを写した画像が多数ネットワーク上で得られますので、超新星の同定の参考になるでしょう。
(例えばhttp://www.jate.u-szeged.hu/~klaci/sn99el_12.jpg)

2000E and 1999el

母銀河は、中央部の棒構造があるかないかはっきりしない渦巻型(SABbc)で、超新星2000Eの出現位置は、東から南を通って北西に伸びる内側の腕の、中心核に近い南側の部分に重なっています。

超新星のスペクトルも観測され、極大前のIa型超新星であろうと報告されています。 また、星間物質による吸収があることも言われています。 これは、超新星が赤く観測されていることと合致します。 この銀河は銀河面に近く(銀緯15.5度)、私たちの銀河系内での星間吸収がVバンドで1等程度あると推測され、また母銀河内での吸収もあるようです。 母銀河の後退速度(私たちの銀河回転を補正した)が1700 km/sほどで、吸収を受けない典型的なIa型超新星なら極大等級が13等程度になると期待されるのですが、吸収のためにV等級では14等程度以下ではないかと予測されます。 しかし、波長の長い光は吸収を受けにくいため、CCD撮影などではもう少し明るく見えると思われます。 一方、超新星1999elのほうは昨年12月31日に16.4等と報告されており(IAUC 7344)、現在も16等台であろうと思われます。 ただし、この超新星のごく近く(数秒ほどのところ)にはおよそ17.3等と18.6等の2つの前景の星があり、超新星はこの中間にあります。 超新星をそれらの星と分離するのはやや難しいかもしれません。 (http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/)

夕方の北西低い、もしくは明け方の北東低い天体ですが、次にいつ起きるかわからないことでもあり、珍しく明るい2つの超新星をとらえるのは興味深いでしょう。 もちろん、遠い銀河の距離測定の標準とされているIa型超新星の性質を解明するため、明るさをモニターし、光度変化を調べることも重要です。

[参考] 半年以内に2個の超新星が発見された例:

NGC 2276SNe 1968V and 1968W
NGC 1316SNe 1980N and 1981D
MGC+10-24-07SNe 1992R and 1992ac
NGC 664SNe 1996bw and 1997W
無名銀河SNe 1997dl and 1997dk
NGC 6754SNe 1998X and 1998dq
IC 5179SNe 1999ee and 1999ex
NGC 6951SNe 1999el and 2000E