X線でみたクェーサー3C295の中心部

【1999年11月16日 NASA TodayChandra X-ray Observatory Center

HST image

クェーサーとして知られるうしかい座の電波銀河3C295はX線で観測することのできるもっとも遠い銀河集団の一つである。この銀河集団の中心部には可視光でも見ることのできる楕円銀河があり、今回観測された強烈なX線源の位置とも一致している。楕円銀河の中心部には巨大なブラックホールが存在し、その内部に周囲のガスが落ち込む際に強烈なX線が放射されていると考えられる。

可視光(ハッブル宇宙望遠鏡)、赤外線、電波画像との比較など

(左図)3C295(Cl 1409+524)のX線画像。中心部にはとくに明るく輝く点が2個検出された。周囲には直径200万光年にもおよぶ巨大な高温ガスが存在することがわかった。

3C295は当初、強烈な電波を放出する天体の一つとして検出された。その赤方偏移の値からこの天体が地球から約50億光年ものかなたにあることがわかり、クェーサー(準星)として知られるようになった。

チャンドラX線宇宙望遠鏡による高分解能観測により、3C295の詳細なX線構造がはじめて明らかになった。周囲に広がるX線の光芒は5000万度ものガス星雲が存在することを示しており、その直径はざっと200万光年におよぶ。銀河系からアンドロメダ銀河までの距離に匹敵する直径をもつガス星雲の中には100個以上のサテライト銀河が隠されているものとみられるが、X線ではみることができない。このガス星雲は1000個以上のサテライト銀河を形成するのに充分な質量をもっているものとみられ、3C295は宇宙全体の中でももっとも重い天体の一つに数えられている。

3C295の中心部には可視光でも私たちの銀河系の数倍程度の質量をもつ楕円銀河が見えている。チャンドラX線宇宙望遠鏡の観測により、はじめてこの銀河の中心部にX線の輝点が検出された。2つの明るい輝点間の距離は10万光年、すなわち私たちの銀河系の直径にもおよぶ。この2つの輝点は電波でみたときのジェット構造にも対応しており、周囲のガスが楕円銀河内部に隠されているsupermassive型ブラックホールに落ち込む際に放出されているものとみられる。

それではこの周囲200万光年もの領域に広がる高温ガスのエネルギー源は何なのであろうか。今回の観測結果から、約100万年ほど前にこのブラックホールを中心とする大爆発が起きていた可能性が指摘されている。ブラックホールの周囲に広がる物質の質量があまりに大きすぎて、単位時間あたりにブラックホールに流入する物質の量が限界に達した結果、ブラックホール周囲の圧力が高まって物質やエネルギーが外側に跳ね返されたというのである。基本的には恒星の超新星爆発と同じメカニズムといえる。このようにして周囲のガスにエネルギーが伝播し、ひじょうに広い領域のガスがX線を放つ高温状態になったと考えられる。

<ニュースソース>
Chandra X-ray Observatory Center Press Room

<チャンドラX線宇宙望遠鏡ニュース>
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