小惑星ユージェニアに衛星

【1999年3月25日 国立天文台天文ニュース(247)】

アメリカ、ボールダー、サウスウエスト研究所(Southwest Research Institute)のマーリン(Merline,W.J.)は、多数の人の協力の下で、小惑星(45)ユージェニア(Eugenia)に衛星が存在することを発見したと発表しました。

この衛星は、1998年11月1日に、ハワイ、マウナケア山にある口径3.6メートルの、カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡により、波面補償光学系を使って H,J,Kバンドのそれぞれで直接撮影をすることで発見したものです。 この衛星は小惑星ユージェニア本体より6等も暗いものでした。 その後、10日以上の間をおいて間欠的に5夜の追跡観測をおこない、確認をしたものです。 これらの観測から、マーリンらは、衛星の公転周期4.7日、視線方向と約45度傾いたほぼ円軌道をもつと述べています。 衛星は、小惑星本体から見かけ上もっとも離れたときでも、角度でわずか0.8秒しかないということです。 星食の観測から小惑星に衛星があることが示唆されたことはありましたが、地上観測によって小惑星に現実に衛星が発見されたのは始めてのことです。

探査機の観測も加えれば、小惑星に衛星が確認されたのはこれが最初ではありません。 現在木星を周回、観測をしている探査機ガリレオが木星に向かう途中、1993年8月に小惑星(243)イーダ(Ida)に接近観測をおこなったとき、イーダに直径1.5キロメートル程度の衛星があるのを発見しています。 この衛星はダクティルと名付けられました。 したがって、小惑星に確認された衛星は、これが2例目ということになります。

ユージェニアは、1857年6月27日に、パリのゴールドシュミット(Goldschmidt)が発見した小惑星です。 その名は、ナポレオン3世の妃で、3世の外交政策に影響を与えたことで知られるユージェニア(Eugenia de Montijo de Guzman)を讃えて名付けられたものです。 またこれは、(神話ではなく)現実の人名を小惑星に名付けた最初の例であるといわれています。

ダンハム(Dunham,D.W.)の予報によりますと、ユージェニアによって、3月27日前後に11.9等の恒星 CMC804951 の星食があります。 しかしこの星食は、残念ながら北極周辺だけでしか見ることができないということです。

参照  IAUC 7129(Mar.20,1999).