青白い1等星のみなみじゅうじ座α星の固有名は「アカ」?

【2010年4月1日(エイプリルフール) アストロアーシ】

1等星の世界共通固有名を検討する世界天文学連盟第4分科会第78委員会で、これまで風情ある固有名が付けられていなかった「みなみじゅうじ座α星」の命名をめぐって大激論。ついに固有名の採択は、総会での直接投票に持ち込まれることになったようだ。


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ケンタウルス座、みなみじゅうじ座付近。写真中央やや右下の十字の、一番下にあるのが、「アカ」と呼ばれることになるかもしれない星。クリックで拡大

現在、1等星(first magnitude stars)は、-1.44等のシリウスを筆頭に1.35等のレグルスまで、視等級が1.5等未満の21個の恒星(太陽は除く)が数えられている。こうした1等星は、夜空の中でも目立つため、太古からさまざまな地域で独自の名前を付けられていたことが多い。現在、広く一般に使われている固有名も、古い歴史を持つ名前がほとんどだ。

恒星の固有名は、天文学的にはほとんど意味を持たないため、これまで天文学の分野では重要視されることはなかった。しかし、天文普及において、星空への興味の入り口として実際に星空を眺めて星座をたどるときに、目印となる明るい1等星の存在とその呼び名はきわめて重要だ。

実は、昨今の世界的な不況による研究費削減などで、最前線の学者たちも天文学の発展について一般市民の理解を得るため、さまざまな普及活動を行う必要性を感じ始めている。そこでIAL(世界天文学連盟)では、普及活動の一環として世界中の人たちが特定の1等星を同じ名前で呼べるように、1等星の世界共通固有名を定めることにした。すでに昨年より、一時的に第4分科会(恒星)の中に「第78委員会(1等星の固有名の命名)」が立ち上げられ、各国の代表者が議論を重ねている。

古くからの固有名を持つ1等星については、日本でもなじみのある名前が採用されることはほぼ確定だが、問題なのが唯一、現在でも固有名らしい名前のない「みなみじゅうじ座α星」だ。

現状、日本国内では、ケンタウルス座の2つの1等星とみなみじゅうじ座の2つの1等星については、ほとんどの地域で見ることができないこともあってか、一般的にあまり風情ある名前で呼んでいない。ケンタウルス座に関しては、α星をアルファケンタウリ、β星をベータケンタウリと呼ぶ人も少なくないが、これらは単純に学名の英語読みそのままである。また、みなみじゅうじ座に関しても、α星をアクルックス、β星をベクルックスと呼んでいる人もいるが、やはりいずれも学名に由来する名前だ。

欧米諸国では、ケンタウルス座α星にリギルケンタウルス(Rigil Kentaurus)、ケンタウルス座β星にはハダル(Hadar)やアゲナ(Agena)という固有名が付けられている。さらに、みなみじゅうじ座β星にはミモザ(Mimosa)という固有名が存在する。これらは古くからの由来のある名前だ。ところが、もっとも赤緯が南に位置する1等星のみなみじゅうじ座α星だけ、なぜか風情ある名前がないのである。

そこでIALでは、実際にみなみじゅうじ座α星が見える地域の言葉から固有名を採用する方針を固め、南アフリカの公用語の1つであるングミ語や、マダガスカル語、マオリ語などから、その候補を挙げている。中でも、もっとも有力な候補となっているのが、マオリ語の「ウェテュオアカ」だ。これは「根元の星」の意で、十字形を樹木に見立てたときに、もっとも下に位置することに由来する。

しかし、ヨーロッパ圏の一部の有識者から、発音しにくく賛成できないため、妥協案として単に「根」を意味する「アカ」にしてはどうか、という意見が出されている。

これに対して猛反発しているのが日本だ。そもそも、みなみじゅうじ座α星はスペクトル型がB型の星で、見た目にも青白い。これを日本語の「赤」と同じ発音の「アカ」と呼ぶには無理がある、というのがその理由だ。

こうしたことから議論は紛糾し、結果的にこの夏に行われるIALの総会で、出席会員の直接投票によって採択されることになったようだ。各国の思惑もあり、すんなりとは決まりそうにないが、世界中の人たちが使う名前だけに、誰もが納得できる親しみやすい固有名になることを願いたい。

この記事は2010年4月1日にエイプリルフール記事として公開したもので、内容はすべて捏造です。記事中の団体や技術等は、実在のものとは一切関係ありません。