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宵の明星・金星

金星ってどんな星?

太陽、月に次ぐ明るさ

夕空の金星と三日月

日が沈んでまもなく、三日月のそばをよく見ると…

金星が宵の空にあるときは、日が沈んだ後どの星よりも先に輝き始め、明け方の空にあるときは、最後まで輝きつづけます。一番明るいころの金星は、視力がよい人なら白昼でも肉眼で見えるほどです。

太陽と月を除けば、金星より明るい天体は存在しません。肉眼で観察できる時期の金星はおよそ-4等級で、明るいときには-4.7等にもなります。参考までに、ほかの主な惑星の最大光度は火星が-3.0等、木星が-2.8等、水星が-2.4等、土星が-0.5等。全天一明るい恒星、おおいぬ座のシリウスは-1.5等ですが、金星の最大光度はその20倍近くもあるのです!かつてその明るさと美しさは、ローマ神話に登場する美の女神ビーナス(Venus)に例えられました。現在も金星は英語でVenusと呼ばれています。

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真夜中に見えない理由

地球と金星の軌道

金星と地球の軌道(ほかの惑星は省略)。クリックで拡大(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

太陽系の8惑星は内側から順番に水星−金星−地球−火星−木星−土星−天王星−海王星です。第2惑星・金星は地球のすぐ内側を回っているので、地球から見て決して太陽の反対側に来ることはありません。金星が明け方か夕方にしか見えなくて、真夜中に観測できないのはこのためです。

金星の動きをもう少し詳しく追ってみましょう。

金星が地球から見て太陽と同じ方向にあるときを「」といいます。合の時には、地球からその姿を見ることはできません。そして、太陽の向こう側での合を「外合」、こちら側での合を「内合」といいます。

さて、内合を過ぎた金星は太陽の周りを反時計回りに移動し、太陽の西側に見えるようになります。このとき、地球からは日の出前の東の空に見えるようになります。金星は太陽から徐々に離れていきますが、ある点を境に今度は太陽に近付き始めるようになります。この点にきたときを、「西方最大離角(太陽の西側で起こる最大離角)」といいます。金星は明け方の東の空で明けの明星として輝く姿を見ることができます。

西方最大離角を過ぎた金星は、しばらくは朝焼けの空に残って見えていますが、その後は急加速しながら太陽に近付いていきます。そして、「外合」を迎えます。地球の動きを加味して考えれば容易に理解できますね。やがて金星は太陽の東側に姿をあらわします。そして「東方最大離角」のころには夕方の西の空に輝くようになるのです。このころの金星が宵の明星とよばれます。

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地球と似て非なる「兄弟星」

地球と金星の比較(大きさ)

地球と金星の比較(大気)

金星と地球の比較。大きさはそっくりだが(上)、地表は温室効果でまったくの別世界になってしまった(下)。クリックで拡大(太陽系ビジュアルブックから引用)

太陽系の惑星で一番地球に似ている星、というと火星を挙げる方が多いのではないでしょうか。かつて液体の水が豊富に存在した強い証拠がありますし、生命の痕跡があるとする研究者もいます。北極や南極は氷で覆われていて、その面積は季節と共に変動します。しかし、火星の半径は地球の半分、質量は10%しかありません。

それに対し、金星の半径は95%、質量は80%と、地球にとても近い数字です。距離の上でも近い両者は、「兄弟星」と呼ばれることもありました。にもかかわらず現在、金星よりも火星の方が地球に似ているという方が多いのは、探査機などの活躍で金星の過酷な環境が明らかになったからでしょう。

生まれたばかりの金星と地球は、お互いによく似ていたと考えられています。どちらも高温で、水蒸気、二酸化炭素、窒素、塩素、硫黄などからなる原始大気で覆われていました。その後地球では気温が下がり、液体になった水が海を作り、二酸化炭素が海洋に溶け込んで石灰岩として取り込まれた結果、窒素を主体とした大気ができあがったのです。

ところが金星は太陽に近かったため、温度が下がることはありませんでした。水蒸気は太陽の紫外線で分解されてしまい、二酸化炭素97%、窒素3%、90気圧もの大気が残されました。濃硫酸の厚い雲で覆われて、太陽光の80%近くを反射しています(金星が明るく見える理由の1つです)が、二酸化炭素の強烈な温室効果によって地表付近は500℃もの高温に保たれています。

金星が地球どころか、ほかのすべての惑星と異なるのは、逆向きに自転している点です。しかも、自転周期は243日(以下、「日」は地球における1日のこと)と、225日の公転周期よりも長いため奇妙なことになります。金星では日の出から日の出までの時間、つまり「1日の長さ」は、自転周期よりはるかに短い117日間。しかも日は西から昇ります。とても想像できない世界ですね。もっとも、分厚い雲のおかげで、そもそも太陽を見ることができないと思いますが…

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もっと知りたい方のために

金星をはじめとした惑星の動きについては、星空ガイドのコーナー「天文の基礎知識」でも解説しています。

太陽系ビジュアルブック太陽系ビジュアルブック」は金星の見え方から最新の観測成果まで、充実したカラー画像を通して理解できます。付録のCD-ROMにはムービーや詳細なデータも収録されています。もちろん、金星以外の惑星や太陽系天体のこともよくわかります。

宇宙のなぞ研究室「灼熱地獄の金星が地球に似てるってどういうこと?」
150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」にはこうした素朴な疑問と丁寧な解説が、楽しくてわかりやすいイラストとともに、150項目も収められています。宇宙や天文学に興味はあるけど、詳しい解説書を読むのはちょっと…という方におすすめの一冊です。

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