古山さんがいて座に新星を発見

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【2014年2月10日 VSOLJニュース(309)】5月1日更新

茨城県の古山茂さんが1月26日、いて座に新星を発見した。


VSOLJニュースより(309)

著者:前原裕之さん(東京大学木曽観測所)

いて座の新星

いて座の新星。クリックで拡大(撮影:門田健一さん)

いて座は私達の天の川銀河の中心方向にあたり、これまでに多数の新星が発見されています。しかし、いて座の方向は12月から1月にかけて太陽に近く観測が難しいため、この時期に増光した新星は暗くなってから発見されたり、場合によっては見逃されてしまうこともあると考えられます。

1月の終わりごろから明け方の南東の低い空で見えるようになったばかりのいて座に、新星が発見されました。発見者は茨城県の古山茂(ふるやましげる)さんです。古山さんは焦点距離200mmのレンズとCCDカメラを用いて1月26.857日(世界時午後8時34分。日本時翌27日5時34分)に撮影した画像から、8.7等の新天体を発見しました。新天体の位置は以下の通りです。

  赤経  18時25分08.60秒
  赤緯 -22度36分02.4 秒(2000.0年分点)
  いて座の新星の周辺星図

この天体は1月27.847日には千葉県の野口さん、同月28.876日には千葉県の清田さん、2月2.862日には埼玉県の門田さんによってそれぞれ確認観測が行われました。

1月30日に兵庫県立大学西はりま天文台の口径2mなゆた望遠鏡を用いた分光観測が行われ、この天体のスペクトルには水素のHα、Hβ輝線のほか、ナトリウムD線や一階電離した鉄、酸素の禁制線、中性酸素、一階電離したカルシウムの輝線が見られることがわかりました。また、Hα輝線や中性酸素の輝線には青側が吸収線となる「P Cygプロファイル」が見られました。これらの特徴から。発見された天体が極大を過ぎた古典新星であることがわかりました。

vsolj-obsメーリングリストに報告された清田さんと広沢さんの観測によると、この天体は1月28日には10.2等ほどでしたが、同月31日には11等、2月4日には11.6等まで減光しました。分光観測によるとHαと中性酸素の輝線成分は青側と赤側に2つのピークを示す構造となっていることが報告されており、今後明るさやスペクトルがどのような変化を示すのかが楽しみです。

5月1日更新

変光星名「いて座V5666」がつけられました。


いて座V5666の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。「ツール」メニュー→「データ更新」で新天体データを取得し、「いて座V5666(2014)」を検索・表示してください。

また、新しいデータや番組をオンラインで入手できる「コンテンツ・ライブラリ」(「コンテンツ」メニューより)では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせてお楽しみください。


アストロアーツ注:古山さんは1987年に古山彗星(C/1987 W2)、2011年に超新星2011irも発見している。

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