スプリンクラーのようにダストを放出する小惑星

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【2013年11月8日 ESA/Hubble

ハッブル宇宙望遠鏡が、複数のダストの尾を伸ばすスプリンクラーのような小惑星の姿をとらえた。速すぎる自転により断続的に地表物質をまき散らしているとみられる。


ダストをまき散らし放射状の尾を見せる小惑星P/2013 P5

ダストをまき散らし放射状の尾を見せる小惑星P/2013 P5。9月10日(左)と同月23日(右)で大きく回転している。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, D. Jewitt (University of California, Los Angeles), J. Agarwal (Max Planck Institute for Solar System Research), H. Weaver (Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory), M. Mutchler (STScI), and S. Larson (University of Arizona))

画像は、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた天体「P/2013 P5」の姿だ。今年8月に新天体サーベイプロジェクト「パンスターズ計画」で発見され、淡い尾が観測されたことから、彗星としての認識符号がつけられた。だが火星軌道と木星軌道の間の小惑星帯にあることや、氷ではなく岩石主体らしいことから、その実体は小惑星に分類されるものと考えられる。

ハッブル宇宙望遠鏡を用いた9月10日の観測で、複数の尾が放射状に広がっていることがわかった。さらに9月23日の画像では、全体がくるっと回転したような劇的な変化を見せている。

この不思議な形状をどう説明すればいいものか、天文学者たちは頭を抱えた。「ダスト(塵)を放出しながら、たった13日で劇的に変化していたのです。とても小惑星とは思えない姿です」(カリフォルニア大学のDavid Jewittさん)。

彗星から放出されるダストは、天体が太陽に近づくにつれ温度が上昇し、昇華した氷とともに噴き出るものだ。一方この小惑星の場合は何が起こっているのだろうか。ひとつ考えられるのが、太陽の光の圧力により自転がスピードアップし、あまりに高速に達したたために地表物質が断続的にまき散らされ、その結果として複数の尾が現われているのではという。尾の構造の分析から、ダストの噴出は今年4月ごろから数回にわたって行われているとみられる。一時の大噴出ではないことから、天体衝突によるものではないようだ。

研究者らは、今後ダスト噴出のようすや自転速度などを詳しく観測することで、この不思議な現象を解き明かそうとしている。


P/2013 P5の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。「ツール」メニュー→「データ更新」で新天体データを取得し、「P/2013 P5 [彗星 P/2013 P5]」を検索・表示してください。