ロシアの火球の推定軌道

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【2013年2月26日 Universe Today/CBET 3423】

今月15日にロシア中部に大きな被害をもたらした巨大火球。その元となる小天体はどのような経路をたどってやってきたのか、各方面での分析が行われている。


火球の母天体の推定軌道

ZuluagaさんとFerrinさんが発表した天体の軌道。クリックで拡大(提供:Jorge Zuluaga and Ignacio Ferrin, University of Antioquia in Medellin, Colombia)

2月15日午前9時20分ごろ(現地時間)ロシア・チェリャビンスクの空に出現した火球は、大きさ十数mの小天体が大気圏に突入したあと上空でバラバラになり、もっとも大きな破片が飛来してきたものと考えられている。

車載カメラや監視カメラなどで記録された多数の動画から、母天体がどのような軌道を持っていたのか検証が行われている。事件から1週間もたたないうちに、複数のチームによる推定軌道が論文や国際天文学連合のメーリングリストで発表された。

論文を発表したのは、コロンビア・アンティオキア大学のJorge ZuluagaさんとIgnacio Ferrinさん。チェリャビンスクの中心街と、約30km南にあるコルキノでそれぞれ撮影された映像、そして中心街から約70km西のチェバルクリ湖で見つかった、隕石でできたと思われる氷の穴の位置をもとに、初期の概算として軌道を求めた。

彼らの推算では、火球は地表に対し秒速13km〜19kmのスピードで突入し、32km〜47km上空で明るくなった。また、母天体の軌道は「アポロ群」に属するもののようだ(参照:星空ガイド:天体の基礎知識)。小惑星はその軌道によっていくつかの分類に分けられるが、アポロ群の小惑星は地球より大きな軌道を持ち、地球軌道に近づいたり交差したりするので衝突の脅威を秘めているものも多い。探査機「はやぶさ」が地表物質を持ち帰った小惑星イトカワも、このアポロ群小惑星の1つだ。

今回の発表はあくまで初期段階の大まかな見積もりだ。根拠の1つとなった湖の穴も隕石ではなく人工的なものでは、と疑うむきもある。今後様々な不確定要素をクリアにしながら、より精度の高い軌道を求めていく予定だ。

軌道が詳しくわかれば、母天体が過去にどの位置にあったかわかる。以前撮影された画像に見逃された天体が写っていないかどうかを探りたい、とZuluagaさんは語っている。

〈参照〉

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  • アストロアーツ 星空ガイド:

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