スピッツァー、地球よりも小さい系外惑星の候補を発見

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2012年7月24日 NASA

NASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」が、地球の3分の2サイズの系外惑星候補を見つけた。33光年かなたにあるこの「UFC-1.01」は、地球より小さい系外惑星の中では最も太陽系に近い。


UCF-1.01の想像図

マグマで覆われているUCF-1.01の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

地球より小さいサイズの系外惑星は今までごくわずかしか見つかっていない。これまでは発見済みの系外惑星のトランジット観測(惑星が恒星の手前を通過する際に見られるわずかな減光の検出)を行ってきたNASAの衛星「スピッツァー」が、今回初めて系外惑星の候補を発見し、生命の存在に適した地球サイズの惑星を探索するうえでスピッツァーが今後果たすであろう役割を示す成果となった。

「スピッツァーのおかげで、我々はとても小さく、熱く、そして恒星にとても近い惑星の存在を示す強力な証拠を見つけました。UCF-1.01のような太陽(主星)近傍の小さな系外惑星を見つけることは、今後、次世代装置でそれらの詳細を調べることにつながるでしょう」(米セントラルフロリダ大学のKevin Stevensonさん)。

この天体は、Stevensonさんらが33光年かなたにあるしし座の赤色矮星「GJ 436」を回る海王星サイズの系外惑星「GJ 436b」を調査していた際に偶然発見したものだ。「スピッツァー」のデータでGJ 436から放たれる赤外線の変化を見ていたところ、GJ 436bの通過によるもの以外にも、微弱に減光する部分があることに気づいた。

そこでさらにスピッツァーのアーカイブデータを調べてみると、この変化が周期的であることが明らかになった。つまりそこにもう1つの惑星が存在しており、通過による減光が起こっている可能性があるのだ。

減光の周期と減光量から見積もると、UCF-1.01は直径8,400km(地球の3分の2)、主星との距離は太陽〜水星よりもさらに近く地球〜月の7倍程度しかない。このため表面温度は摂氏600度以上と考えられる。また、公転周期はわずか地球の1.4日分だ。この惑星に大気があったとしてもとっくに蒸発しているだろう。ということは、水星のようにクレーターだらけで地殻活動のない世界かもしれない。また、共同研究者のJoseph Harringtonさんによれば、主星の熱で惑星の表面が融け、マグマで覆われている可能性もあるという。

さらに、Stevenson氏らはGJ 436の周囲にもう1つの惑星が存在する可能性も見つけている。「UCF-1.01」もこの「第3の惑星」もスピッツァーで数度にわたって存在の兆候が観測されているが、現時点の最高精度の観測装置をもってしても、地球の3分の1程度らしいという以外その質量を見積もることはできない。質量がはっきりしないと確定とはならないため、この天体は惑星“候補”にとどまっている。

「今後の観測で興味深い結果が出ることを楽しみにしています。もしかすると、スピッツァーで火星(地球の約半分)より小さい惑星も発見できることが示されるかもしれません。打ち上げから9年、スピッツァーは今でも我々に科学の新しい方向を教えてくれています」(NASAジェット推進研究所のMichael Wernerさん)。


ステラナビゲータで系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータでは、620個を超える「惑星の存在が確認された恒星」を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しており、GJ 436(中心星)が存在する方向を星図に表示できます。ステラナビゲータをご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。