恒星を引き裂くブラックホール

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【2011年10月14日 アリゾナ大学

ブラックホールが、その強い重力によって恒星をばらばらに引き裂いていると考えられる現象がとらえられた。この現象は超高エネルギー宇宙線の発生源という可能性もあり、さらなる研究が期待される。


ブラックホールに恒星が引き裂かれている想像図

ブラックホールに恒星が引き裂かれている想像図(提供:Mark A. Garlick/University of Warwick)

ブラックホールは非常に重力の強い天体だ。そのすぐ近くを恒星が通ると、恒星のブラックホールに近い側にかかる重力と遠い側にかかる重力に大きな違いが生じ、恒星がばらばらに引き裂かれてしまうと考えられている。

このような現象によって引き裂かれたガスの一部はブラックホールへと落ち込み、数日から数ヶ月にわたって「TDF」(tidal disruption flare:潮汐破壊フレア)と呼ばれる閃光現象を起こすと推測されている。これを観測することは近年の天文学上で重要なトピックだと思われてきた。

これまでX線や紫外線で観測する宇宙望遠鏡がこういった現象らしきものをとらえた例はあったが、誤発見やバイアスを避けるためにはなるべく多くの観測データを使ってたくさんの実例を集める必要がある。今回初めて、地上の可視光望遠鏡による銀河のサーベイデータからこの閃光の実例を複数発見することに成功した。

宇宙で起きる突然明るくなる現象としては、超新星爆発や、ブラックホールを持つ銀河中心の活動銀河核(AGN)の降着円盤からの発光なども存在するため、それらと区別する必要がある。TDFが数日から数ヶ月にわたって発光を続けているのに対し、超新星爆発は短期間で暗くなり、またAGNは何度か発光現象を繰り返すので、継続的に観測を行っていれば区別が可能だ。

そこで研究チームが利用したのがスローン・デジタルスカイサーベイ(SDSS)のデータだ。SDSSには10年以上にわたって繰り返し測定された、200万個以上もの銀河のデータがあり、この中から342例の発光現象を見つけた。そのほとんどは超新星爆発かAGNの発光現象だったが、その中で2例だけTDFが見つかった。

AGNの発光現象は何度も繰り返し起こるが、この2例は一度発光した後は光ることはなかった。また、超新星爆発では最初青色なのが急速に赤色へと色を変えながら減光するのに対し、この2例は色が変わらず徐々に暗くなっていくことから、TDFであると結論付けることができたのだ。

研究指導を行ったGlennys Farrar氏は、「次のステップは、TDFの性質や継続時間を説明するようなモデルを構築し、TDFが超高エネルギー宇宙線の発生源であるかどうかの謎に取り組むことだ」と語っている。