宇宙の膨張速度を決めるハッブル定数が従来より精確に

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【2011年3月15日 HubbleSite

アメリカの研究チームにより、宇宙の膨張速度を決めるハッブル定数の値が従来より高精度で求められた。宇宙膨張を加速させる「暗黒エネルギー」説をさらに確固たるものにし、別の説を除外する結果となっている。


(銀河NGC 5584の画像)

おとめ座の方向約7,200万光年先にある「NGC 5584」は、調査対象となった8つの銀河の1つ。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, A. Riess (STScI/JHU), L. Macri (Texas A&M University), and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA))

アメリカのAdam Riess氏らの研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)に搭載された広域観測カメラ3(WFC3)の観測結果から8つの銀河の距離と地球から遠ざかる速度を測定し、誤差3.3%というひじょうに高い精度でハッブル定数を求めた。ハッブル定数は宇宙の膨張速度を決めるパラメータで、遠い銀河ほど速く遠ざかるという比例関係の定数となる値だが、今回発表された値は73.8km/s/Mpcというものだ。これは、距離が1メガパーセク(100万パーセク=約326万光年)離れるごとに、遠ざかる速度が秒速73.8km大きくなる、ということを表している。

銀河までの距離測定は、Ia型超新星の明るさを観測して行われた。Ia型超新星はピーク時の明るさが一定で、しかもたいへん明るいため、見かけの明るさと比較することで遠方銀河までの距離の測定に用いることができる。

宇宙が加速度的に膨張していることの説明として、物体同士を遠ざけ空間を広げる斥力()を生む「暗黒エネルギー」が提唱されており、Riess氏らの研究チームなどが1998年にその存在の観測的な証拠を発見している。もう1つの説として「天の川銀河周辺を取り囲むさしわたし80億光年の泡状の空洞が膨張している」というものがあり、この場合の定数値は約60〜65となる。だが今回、ハッブル定数の値が正確にしぼりこまれたことで、この説が除外された。

宇宙の膨張速度をより正確に求めることで、暗黒エネルギーの強さや宇宙の形状、存在する素粒子の種類など、さまざまな推計が可能になる。

注:「斥力(せきりょく)」 物質同士を引き合わせる「引力」とは反対に、物質同士を引き離す力のこと。