「ケプラー」ミッションで岩石惑星が発見された

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【2011年1月18日 NASA

NASAの「ケプラー」ミッションがより小さな惑星にせまっている。今回発見された「Kepler-10b」 は地球環境とはかけ離れた灼熱の惑星だが、それでも岩石質の惑星であることには記念碑的な意味がある。まだ見ぬ「第二の地球」にじりじりとせまっていく、そんな面白い時代になった。


Kepler-10bの想像図

Kepler-10bの想像図(提供:NASA)

宇宙望遠鏡で系外惑星探しを続けているNASAのケプラー(Kepler)ミッションは、太陽に似たような恒星から適当な距離(ハビタブル・ゾーン)のところを回る地球サイズの惑星がどのくらい存在するのかを大量のトランジット観測(後述)から突き止めるための戦略的な計画だ。1月10日に発表された「Kepler-10b」は、このミッションで発見された最初の岩石惑星であり、現時点におけるひとつの重要な通過点であるといえる。

ガスでもない、氷でもない、岩石質の惑星であるということがわかるのは、トランジット観測で惑星のサイズが推定できることによる。トランジットとは、惑星が恒星の手前を通るときに、恒星からの光が一定時間ほんのわずかに遮られる現象であり、いわば光源の手前に惑星を持ってくる天然の実験のようなものだ。恒星の揺れをとらえる別の観測(ドップラー法)の結果とあわせることで、惑星の密度などのパラメータを知ることができる。もし質量の割にサイズが大きければ低密度、質量の割にサイズが小さければ高密度な惑星であるというように、惑星の基本的な姿がわかる。

Kepler-10bのサイズ(直径)は地球のおよそ1.4倍で、これまで見つかった系外惑星(大きさが推定されたもの)としてはもっとも地球に近い。平均密度は1立方cmあたり8.8g(地球は5.5g)と、私たちの太陽系のどの惑星よりも高密度だ。Kepler-10bの発見は、観測によって小さく高密度な固体惑星にせまれる時代になったことを証明している。

しかしながら Kepler-10bの環境は「第二の地球」と呼ぶにはほど遠い。公転周期は0.837495日、つまりこの惑星の1年は20時間ほどしかない。また、中心星(*1)からの距離は0.01684天文単位、私たちの太陽系でいえば太陽―水星間の20分の1以下という至近距離にある。昼間の側は強烈な光線にあぶられており、海をたたえることなど考えられず、岩石の蒸気に覆われているという見方もある。地球の風景とは似ても似つかない灼熱の惑星だ。

ケプラーミッションの「第二の地球」探しはまだまだ続く。宇宙望遠鏡は岩石惑星にせまる強力な手段である。大気に邪魔されない宇宙であれば、高い精度で惑星のサイズを決定できるし、観測を連続的に行えるのも、昼夜と無関係な宇宙望遠鏡の強みである。ケプラーミッションは天空の一定領域に含まれる非常に多くの恒星の明るさを高精度で見張っている。今後、多数の系外惑星候補の発表が続くとみられる。

中心星から地球軌道ほど離れたところの惑星によるトランジットは1年に1回ほどしか起こらない。それに比べて Keplar-10bのように短い周期で回る惑星は短期間でトランジットを起こすので発見されやすい。中心星に近い惑星系は比較的早い段階で次々と発表されることだろう(*2)。いずれは太陽から地球までと同じくらい中心星から離れたところを回る岩石質の惑星の発見が期待されている。ケプラーミッションからはしばらく目が離せない。

*1 中心星となっている恒星(Kepler-10)は、560光年の距離にあるりゅう座の11等星であり、アマチュア用の望遠鏡でも自分の目で見ることはそれほど難しいことではない。

*2 この宇宙望遠鏡の名となっているケプラーとは、17世紀に惑星の運動法則を発見した天文学者ヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler)のことである。中心星に近い惑星から見つかっていくというのは、現代の「ケプラーの法則」といえるかもしれない。


ステラナビゲータで系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータでは、420個を超える「惑星の存在が確認された恒星」を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しており、Kepler-10(中心星)が存在する方向を星図に表示できます。ステラナビゲータをご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。

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