ガス惑星になぞの高温領域

【2010年10月22日 JPL

アンドロメダ座υ(ウプシロン)星のまわりを回るガス惑星の観測で、惑星の表面のもっとも熱い領域が、予測から80度もずれていることが明らかになった。その理由についてはいくつか仮説があげられているが、まだはっきりとわかっておらず、同様の天体のさらなる観測が必要とされている。


(υ And bと中心星の想像図)

υ And bと中心星の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

地球から約44光年の距離にあるアンドロメダ座υ星のまわりを回る惑星b(υ And b)は、木星のような高温のガス惑星(ホットジュピター)である。その公転軌道は中心星にひじょうに近く、中心星に対していつも同じ面を向けて回っている。

この場合、惑星面でもっとも高温となるのは、中心星からの光をまともに受ける領域であるはずだ。しかし、NASAの赤外線観測衛星スピッツァーによる以前の観測によって、もっとも高温となる領域が、本来予測される場所から最大で30度ほどずれている可能性が示唆されていた。

米・カリフォルニア大学ロスアンジェルス校のIan Crossfield氏らの研究チームは、2009年にυ And bが4.6日で中心星のまわりを回っていることを観測から明らかにし、その公転周期をもとに光度の変化を調べた。

光度変化を調べると言っても、望遠鏡を使って惑星の姿を見ることはできない。直接見る代わりにスピッツァーは、赤外線の目で中心星と惑星からの放射量を観測する。中心星からの光に混ざったかすかな惑星の光をより分けて、軌道上を移動しながら地球に向かって放射される赤外線量の変化を検出できるのである。そのような観測で得られたデータから、一番多く赤外線を放射している領域、つまりもっとも高温の領域と中心星から正面の位置とのずれが、以前に示唆されていたよりも大きく、80度ほどであることが明らかになった。

Crossfield氏は「ここまで大きくずれる高温領域が見つかるとは予想もしていませんでした。ホットジュピターの大気について、わたしたちは自分たちが思っているほど、まだよくわかっていないことは確かです」と話している。

なお、この現象の理由については、超音速の恒星風によって衝撃波が起き、それにより物質が熱せられているためであるとか、惑星と中心星との間で磁場が働いているためであるとか、さまざまな可能性があげられている。しかしこれらはあくまで仮説にすぎない。より多くのホットジュピターを観測し、どの仮説が正しいのか確認しなければならない。