太陽の約300倍の質量を持つモンスター級の星

【2010年7月27日 ESO

これまでに知られている中で、もっとも質量の大きな星が発見された。その質量は太陽の300倍で、理論上の上限とされている恒星質量の2倍もある。また、明るさも太陽の1000万倍もある。型破りの星が持つ記録は、すぐには破られそうにない。


(タランチュラ星雲の画像、R136の周辺領域の拡大画像、近赤外線の波長でとらえたR136の画像)

(左から)タランチュラ星雲の可視光画像、R136の周辺領域の一部拡大画像、近赤外線の波長でとらえたR136の画像。クリックで拡大(提供: ESO/P. Crowther/C.J. Evans)

NGC 3603は、地球から約2万2000光年の距離に位置する星団で、広範囲に広がるガスやちりが材料となって爆発的な星が形成が進んでいる。また、RMC 136aは、地球から約16万5000光年の距離にあるタランチュラ星雲に存在する星団で、高温の若い大質量星が存在している。

英・シェフィールド大学の天体物理学教授Paul Crowther氏らの研究チームは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡(VLT)を使った観測、およびハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブ・データを利用して、これら2つの若い星団「NGC 3603」と「RMC 136a(R136)」を調べた。

その結果、質量が太陽の数十倍、表面温度が4万度以上(太陽の約7倍)、明るさが数百万倍という大質量星をいくつか発見した。このような星の誕生時の質量は、太陽の150倍以上だったと予測されている。

R136では、誕生時の質量が150倍を超えていたと思われる星が4つ発見された。星団全体からの放射と恒星風のうち、約半分はこの4つの星が占めている。

なかでも「R136a1」は、これまでに発見された星の中で最大質量を持つ。現在の質量は太陽の265倍あり、誕生時は太陽の320倍もあったと計算されている。R136a1が周囲に放射するエネルギーは、地球にもっとも近い星形成領域として有名なオリオン座大星雲(M42)の50倍以上である。

研究チームの一員で、英・キール大学のRaphael Hirschi氏は、「もし、太陽とR136a1を今入れ替えたら、その大きな質量の影響で、まず地球の1年の長さがわずか3週間にまで短くなり、強烈な紫外線を浴びて、地球上の生物は生きられなくなるでしょう」と話している。

Crowther氏は、R136a1の質量がこれまでに発見された恒星の中で最大であるだけでなく、明るさも太陽の1000万倍あることから「この記録は、そうすぐには破られないと思います」と話している。

短命な大質量星の観測は難しく、形成については謎が多い。R136a1の質量は、現在広く受け入れられている理論が予測する星の質量の限界を2倍以上も超えている。果たして、誕生時から質量が大きいのか、それとも小さな星同士の合体によって形成されたのだろうか、更なる謎を研究者に投げかける。