太陽フレアをほぼ再現、最新モデル開発成功

【2010年3月19日 京都大学

日本の研究チームが、太陽観測衛星「ひので」の精密なデータを元に、太陽フレアやそれにともなう宇宙環境の乱れなどをほぼ再現できるモデルの開発に成功した。これにより、宇宙天気予報の研究や太陽フレアなどに伴う現象のメカニズムの解明が進むと期待されている。


((左)太陽フレアのX線画像、(右)再現された磁力線と衝撃波面)

(左)太陽フレアのX線画像、(右)再現された磁力線と衝撃波面。クリックで拡大(提供:京都大学リリースページより)

((左)太陽フレアと(右)再現された太陽コロナの磁力線構造)

(左)太陽フレアと(右)再現された太陽コロナの磁力線構造。クリックで拡大(提供:京都大学リリースページより)

太陽の活動は11年周期で変動していて、活発であればあるほど黒点の数も多い。静けさを保っていた太陽活動は、昨年から徐々に活発化し始めており、黒点の発生数は2013年ごろには次の極大をむかえると考えられている。

太陽活動が活発化すると、太陽の表面でフレアやコロナ質量放出といった爆発現象が起きる。その影響で地球周辺が磁気嵐に襲われると、地球の磁場全体がかき乱されて、人工衛星や通信、地上電力網などに深刻な障害が発生することがある。被害を未然に防ぐためには、爆発現象を事前に予測する「宇宙天気予報」が不可欠である。しかし、太陽と宇宙空間で複雑な変化が起こるため、正確な予測方法はまだ確立されていない。

京都大学理学研究科附属天文台の柴田一成教授および名古屋大学太陽地球研究所の草野完也教授らの共同研究チームは、宇宙天気予報の基礎となる観測と数値シミュレーションの研究を進めてきた。

同研究チームは、太陽フレアなどを再現できるモデルをつくり、独立行政法人海洋研究開発機構の「地球シミュレータ」を使って、2006年12月13日に発生した大規模フレアに当てはめた。その結果、フレアとフレア発生後に起きる一連の宇宙環境の乱れがほぼ再現された。

また、同研究チームは太陽観測衛星「ひので」を使った観測で、フレア後にプラズマとエネルギーが急速に伝わっていくようすをX線の波動として初めてとらえた。さらに、そのX線の波動が、最新のモデルで再現された磁力線と衝撃波面に対応することも確認された。

このモデルは世界的にも例がなく、太陽フレアやフレアに関連した現象のメカニズムの解明、そのほか宇宙天気による被害を最小限に抑える技術の確立に大きく貢献すると期待されている。