土星の両極で猛烈な渦を観測

【2008年10月30日 JPL News & Features

NASAの土星探査機カッシーニが土星の北極と南極を相次いで撮影し、どちらにも猛スピードで回転する渦が存在する様子をとらえた。地球の台風とは比べものにならないほどの規模だが、共通点もあるらしい。


(左側が北極、右側が南極)

カッシーニが赤外線で撮影した土星の北極(左)と南極(右)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/University of Arizona)

(土星の南極の渦)

土星の南極の渦のクローズアップ。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

2年前、カッシーニの観測から土星の南極に台風のような嵐が存在することがわかった。この嵐は直径8000kmもあり、「台風の目」を中心に時速500km以上で回転している。一方、北極を撮影したところ、巨大な6角形の模様が浮かびあがった。土星の大気がなぜこのような構造を形成するのか、そしてそのメカニズムが両極で異なるのかは不明だった。

カッシーニは今年の6月15日から16日にかけて土星の北極と南極をそれぞれ赤外線で観測し、謎を解明するための手がかりを得た。

今回の観測で、北極の「6角形」の内側に南極と同じような嵐が見つかった。嵐はやはり時速500km以上で回転しているが、不思議なことに6角形はいつまでも崩れない。

一方、南極では渦の中に散らばる無数のまだら模様に注目が集まった。この模様は北極にも見られるが、どうやらその正体は雲の表面から100km下の層で発生した水硫化アンモニウムの雲らしい。この雲が雷雨のような活動を起こして解放した熱が、渦のエネルギー源となっている可能性があるという。

地球の台風やハリケーンは、下層の雲で水蒸気が凝結して水になったときに解放した熱がエネルギー源とされている。地球と土星とでは嵐の規模はまったく違うが、構造がよく似ていることから、土星で渦が形成されるメカニズムも地球の気象現象からの類推で解明できるかもしれない。