1分以内に昼夜が巡る小惑星

【2008年6月9日 Faulkes Telescope South

英国のアマチュア天文家による観測で、地球近傍小惑星「2008 HJ」が、知られている太陽系天体としてはもっとも速く自転していることが明らかとなった。


(小惑星2008 HJの軌道の図)

小惑星2008 HJの軌道(提供:JPL Small-Body Database Browserより)

英国のアマチュア天文家Richard Miles氏は、4月29日にインターネットを通じて、自宅から豪・サイディング・スプリングのフォークス南望遠鏡を遠隔利用していた。この日同氏による観測で、小惑星2008 HJの自転周期が42.8秒であることが明らかとなった。

Miles氏の発見は、その後5月22日に国際天文学連合(IAU)から正式に発表された。

小惑星の明るさは時間とともに変化しており、その変化から自転の周期を知ることができる。42.8秒という自転周期は、8年前に発見された小惑星2000 DO8の78秒より40パーセント以上も短い。2008 HJは岩石質で、大きさは12m×24mほどとテニスコートくらい、質量は5,000tを超えると考えられている。

地球近傍小惑星に分類される2008 HJは今年4月に地球に最接近し、秒速45kmで通り過ぎたが、地球からの距離は100万km以上あったため、危険はまったくなかった。

観測に利用されたフォークス南望遠鏡は、ラス・クンブレス天文台広域望遠鏡ネットワーク(LCOGTN)に参加している望遠鏡のひとつである。LCOGTNは学生や研究者に世界中の望遠鏡を遠隔操作して観測する機会を提供している組織だ。

このネットワークを利用して、大きさ150m以下の地球近傍小惑星を調べるプロジェクトが実施されている。このプロジェクトでは、今年の4月に、小惑星2008 GP3の自転周期が11分8秒であることが学生らの観測で明らかにされた。2008 HJは、このプロジェクトで観測された4つ目の天体であった。

LCOGTNの下部組織であるFaulkes Projectの責任者を務める英・カーディフ大学のPaul Roche博士は、「適切な機材さえあれば、アマチュア天文家や学生がじゅうぶんに科学的かつエキサイティングな成果を生み出せるのです」と話す。地球近傍小惑星に関するわれわれの知識は限られており、学生やアマチュア天文家が貢献できる分野のひとつでもある。

小惑星観測の専門家であるチェコ・オンドジェヨフ天文台のPetr Pravec博士は、「大きさが20mほどの小惑星が42.7秒という周期で自転することは、理論と完全に一致します。まだ観測はされていませんが、1分以下の周期で自転する、数10mクラスの小惑星の仲間が、ほかに数多く存在しているのかもしれません」と話している。