ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた、記録破りのガンマ線バースト

【2008年4月15日 Hubblesite Newscenter

75億光年かなたで銀河1000万個分という記録破りの明るさを放ち、肉眼で見える5等級にまで増光したガンマ線バーストGRB 080319Bの残光を、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえた。


(GRB 080319Bの画像)

ガンマ線バーストGRB 080319B(緑の丸)。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, N. Tanvir (University of Leicester), A. Fruchter (STScI), A. Levan (University of Warwick), and E. Rol (University of Leicester))

NASAガンマ線バーストGRB)観測衛星スウィフトが、GRB 080319Bのガンマ線フラッシュと電磁放射をとらえたのは、今年の3月19日のこと。その後、爆発を起こしたGRB 080319Bは、うしかい座で5等ほどで輝き、4月7日にHSTによって可視光残光の観測が行われた。残光とは、GRBのあとに残って見える可視光やX線の放射である。

HSTの画像には、GRB 080319Bの舞台となった銀河も写ると期待されていた。しかし、爆発から3週間が経過しているにもかかわらず、GRB 080319Bが明るいために銀河の姿はかき消されており、結局とらえられなかった。

このことに研究者は驚いている。一般に、爆発直後が明るいGRBほど急激に暗くなる傾向にあり、この傾向は現在知られている理論とも一致している。爆発で銀河1000万個分という強力な明るさをほぼ1分間放ったうえに、銀河を隠すほどの明るさを持続するGRB 080319Bのエネルギーが、どこからもたらされているのかは、大きななぞとなっている。

2種類あるGRBのうち、GRB 080319Bのようにガンマ線の放射時間が長いものは「ロング・バースト」と呼ばれている。ロング・バーストの起源は、太陽の50倍ほどの質量をもつ巨大な星の死と考えられている。この爆発は、通常の超新星爆発に比べて強力で、はるかに明るいことから、「極超新星」の異名をもっている。

なお、HSTによるGRB 080319Bの観測は、今年5月に再び行われる予定となっている。

ガンマ線バーストって何?

ガンマ線はX線よりさらに波長の短い電磁波だ。ガンマ線バーストとは、宇宙のある1点から突然、強力なガンマ線がひじょうに短い時間だけ飛来してくる現象。ガンマ線バーストには、性格の違う2種類のものがある。「ロング・バースト」と呼ばれるものは、ガンマ線の放射が2秒から数分程度。この正体は、極超新星爆発だと考えられるようになってきた。また、「ショート・バースト」の放出時間は、数ミリ秒から2秒程度。中性子星やブラックホールの合体という説が有力だ。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.93 ガンマ線バーストって何?より一部抜粋)