125億光年の彼方にある生まれたての銀河は確かに小さかった

【2008年3月25日 日本天文学会記者発表】

125億光年の彼方にある、17個の生まれたての銀河の姿がとらえられた。生まれたての銀河は確かに小さく、わずか4000光年の大きさだった。初めに小さい銀河ができて、それが合体して大きな銀河に成長するという「ボトムアップ・シナリオ」が観測的に証明されつつある。


(125億光年彼方の17個の銀河の画像)

ハッブル宇宙望遠鏡のACSカメラで撮影された125億光年彼方の17個の銀河。白丸印の直径は1秒角で、125億光年先の約2万光年の円に相当する。クリックで拡大(記者発表のページより)

(ハッブルとすばるの画像の比較)

ハッブル(左)とすばる(右)の比較。125億光年彼方の銀河のうち3個を並べたもの。すばるでは星々で電離されたガスの放射が見えているのに対し、ハッブルの高性能サーベイカメラでは0.05秒角の高分解能があり、生まれたての銀河の小ささがわかる。クリックで拡大(記者発表のページより)

銀河の成長物語という長編絵巻の、最初の1ページをかざる17個の銀河の写真が公開された。観測された銀河は125億光年彼方にあり、銀河の直径は約4000光年。現在約10万光年もある立派な銀河も、そのルーツをたどればこうした小さな銀河からスタートしたことを示すものだ。宇宙大規模構造の形成と深く関わる、100億年を超える銀河の成長物語の2ページからは、銀河が合体して成長するという「ボトムアップ・シナリオ」が描かれていることが見えてきた。長編絵巻は理論予測のCGではなく実写版になりつつある。

観測された17個の銀河は、ろくぶんぎ座の領域、何の変哲もない空の一角にある。ここはCOSMOSプロジェクト(Cosmic Evolution Survey:宇宙進化サーベイ)が見つめるCOSMOSフィールドと呼ばれる領域で、銀河はすばる望遠鏡で発見され、ハッブル宇宙望遠鏡で撮像された。

少し詳しく言うと、すばる望遠鏡の主焦点カメラでCOSMOSフィールドの2平方度(満月の視直径の3倍×3倍)の領域を撮像した画像の中から、赤方偏移z=5.7の119個のライマンα輝線天体(水素原子が放射するライマンα輝線で光る星々の周りの電離ガス)がピックアップされ、119個のうち80個の天体についてハッブル宇宙望遠鏡の超高感度・高解像カメラ(ACS)で撮像した。その結果、確実に検出できたのは80個のうちわずか17個しかなかった。残り63個はハッブル宇宙望遠鏡のカメラの検出限界よりも暗いため観測できなかったというわけだ。それほど淡い遠くの光に目をこらし、これだけ多数の生まれたての銀河の詳細な形態をハッブル宇宙望遠鏡で系統的に調べたのは初めてのことだ。ハッブル宇宙望遠鏡の高分解能の画像だからこそ、銀河が確かに小さいことがよくわかる。

ハッブル宇宙望遠鏡の基幹プログラムであるCOSMOSプロジェクトは、宇宙大規模構造の形成や、それと関係する銀河の形成や進化の解明をめざす大規模な国際プロジェクトであり、日本のグループではすばる望遠鏡の主焦点カメラを用いて、2平方度のフィールドを撮像している。2平方度という領域はハッブル宇宙望遠鏡の狭い写野では長い年月をかけてもカバーしきれない広さであり、COSMOSプロジェクトの目的とする銀河形成の謎にせまるには、広い視野と高感度を誇るすばる望遠鏡などとの連携が欠かせない。今回の成果は、誕生したての銀河の姿をとらえるという、COSMOSプロジェクトのひとつの重要な成果と言えるものだ。

日本のグループの代表は愛媛大学宇宙進化研究センターの谷口義明さん。この研究成果は2008年3月の日本天文学会春季年会で報告された。

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