新潟県神林村が、小惑星の名前に

【2007年12月22日 アストロアーツ】

2008年4月に合併で消えてしまう村の名前が、小惑星に残される。新潟県神林村出身で、天体写真家およびイラストレーターとして知られる沼澤茂美氏が、知人で北海道の観測家である円舘金氏の協力を得て、円舘氏発見の小惑星が「かみはやし」と命名された。


かみはやしの誕生を示すデータを記した額

かみはやしの誕生を示すデータを記した額。クリックで拡大(提供:渡辺和郎氏)

小惑星「かみはやし」の発見画像

小惑星「かみはやし」の発見画像。クリックで拡大(提供:渡辺和郎氏)

新潟県神林村は、2008年4月に近隣市町村との合併に伴い消滅してしまう。同村出身の沼澤氏は、後世に村の名をとどめるべく小惑星を見つけることを思い立った。小惑星の名前は、発見者が国際天文学連合(IAU)に提案することができる。地図からは名前が消えても、小惑星「かみはやし」が永遠に空に輝くというわけだ。

しかし、合併までに残された時間は短く、「神林村」が残っている間に「かみはやし」を誕生させるのは不可能かに見えた。そんな沼澤氏が知人の円舘氏にその話を伝えたところ、円舘氏は自分が北海道の渡辺和郎氏とともに発見した小惑星(小惑星番号12751、仮符号1993 EU)を「かみはやし」の名前で登録することを提言したという。

申請手続きを経て、11月24日にIAUの小惑星センター(MPC)が小惑星「かみはやし(12751 Kamihayashi)」の登録を発表した。そこには、名前とともに申請された以下のような説明文も添えられている。

神林村は日本の中央にある新潟県の北部に位置し、人口は約10000人。基幹産業は農業で、広大な神納平野を中心にして岩船米の産地として知られます。海岸から山地まで含まれた多彩な表情を有します。

現在「かみはやし」はおとめ座の方向にあり、明け方の空に17.9等級で輝いている。肉眼では見えなくても、村立天文台のポーラースター神林の望遠鏡で撮影することは可能だ。

沼澤茂美氏のコメント

神林村の星空

市町村合併で地図上からは消える沼澤さんの故郷・神林村の星空。クリックで拡大(イラスト:沼澤茂美(日本プラネタリウムラボラトリー))

まず、「かみはやし」の命名に尽力頂いた発見者の円舘金さん、渡辺和郎さんに心より感謝申し上げます。市町村合併は、私達の暮らしが政治によって翻弄された一例です。財政難を地方統合によって合理化しようとする大前提の中には、人々の心情やコミニュティーに与える影響などはあまり考慮されていません。そんな中で、(人間の一生から見れば)恒久的な秩序を保ち続ける星空に接すると大きな安らぎを覚える気がします。消えゆく郷土の名前を空に永遠に残すことは、時世で変わらざるを得ない世の中へのささやかな抵抗の気持ちもありますが、何よりも村民の心に及ぼす恩恵を期待しています。子供達が星空を見上げ、ふるさとの名前をいつまでも忘れないでいて欲しいと願っています。

小惑星「かみはやし(12751 Kamihayashi)」の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。

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